『ボンバーマンジェッターズ』15・16話感想

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第15話 さらばジェッターズ

ヒゲヒゲ団のムジョーがボンバー四天王を従えて高らかに所信表明する裏で、前回のフレイムボンバーとの戦いでシロボンは敗北を喫し意気消沈……というわけでもく、ゲームで能天気に遊んだり、平気な様子。展開に対して想定されうる感情の動きをするりと避けていくので、視聴者とその目線に立つシャウトにとって非常にやきもきさせられる。心理描写として見た際にも、一筋縄ではいかないシロボンの挫折を表しているようで、露骨に悲しまないというのがかえって生々しく感じられもする。

部屋でゲームをしているシーンの影の当たり方が細やか。シロボンのシルエットも飾り気がないと見えて、シロボンが表面上はいつもの調子を装う背後で心情的にそうはいかないというギャップがさりげなく伝わる。

「大切なのは気持ち」と言い、抜け殻のようになってしまったシロボンにジェッターズを辞するよう言い渡すドクターアイン。大人として然るべき対応を取っているということなのだが、シロボンを慮っているこの描写は、後々明らかになるマイティの内情、そして立場と対比を成してくる。翻って、この回では、シロボンが見習いボンバーマンらしく周囲に見守ってもらっているのはとても健全であると言える。

帰ってきたらボン婆さんに怒られると思いきや、暖かく受け入れてもらえることで、思わずここで涙するシロボン。ここでようやく挫折した悔しさを表に出せるようになる。心が素直に感情を受け入れるのには意外と時間が掛かるし、何も聞かずにそばで見守ってくれるボン婆さんのような存在がいるからできることでもある。

ボン婆さんはシロボンにボムの練習すらも厳しく言いつけたりしないのだが、子供の頃になにかに行き詰まった時って、自分自身が一番苦しいわけで、立ち直るのも、別の方向を向くタイミングも本人次第というのが、とても尊重された大人の振る舞いに感じられる。

ボンバーマンであるシロボンはこれまで見習いボンバーマンと言われていたものの、彼が抜けたジェッターズは四天王率いるヒゲヒゲ団になすすべなくやられてしまう。2話の最後でもメカードが触れていたように、この世界におけるボンバーマンは、戦力として相当重用される存在なのだと改めて示されている。

友達と草野球をやっているときにふと、近くにルーイもいなければ、マイティもいないことを突きつけられるという多重の寂寥感に見舞われるシーンもあまりに見事だと思う。結局ジェッターズをやめても全てが元通りにはなっておらず、身の回りの全てがいつの間にか変わってしまっている。

そうした焦燥感に見舞われているうちに、かつてマイティにかけられた言葉を思い出す。

好きなら人がなんと言おうと諦めちゃだめだ。でもそうじゃなかったら、いくら続けようと思っても続かないよ

そこでそれでもなお(野球を)やりたいと答える過去と、今のシロボンが重なり、立ち直っていく。挫折したシロボンの繊細な心情、それを見守る周囲の眼差しを受けつつ、猶予の中、心の支えたるマイティとの思い出が反響し、自ずと進むべき道を見出していく再起が、この1話に込められている。ジェッターズ全体の中でも非常に秀逸な回だと思う。

バーディのいう「マイティはどんなに苦しくても弱音だけは吐かなかった。なぜなら奴はジェッターズのリーダーだからだ」というシャウトに対する励ましは、ドクターアインの計らいと併せてみると、マイティの境遇にまたも思いを馳せてしまう台詞である。それはある意味では呪いのように働きかけてしまうこともあったのではないか。

 

第16話 帰ってきたシロボン

「シロボンの敗北」と並ぶあらすじネタバレタイトル。

閑話休題。前回から続くアバンでも思うのが、肘を伸ばしっぱなしにしたシロボンの歩き方が独特。OPでも走り方のフォームが人間キャラとは差別化されている。今作におけるボンバーマンの作画って、単なる人体構造とは色々勝手が違うので、簡単な記号の合せ技に見えて、かなりの工夫があるのだろうな。

マイティもかつて挑んだという試しの門でシロボンを待ち受けていたのは、バーチャル空間で実践さながらの修行。修行内容自体はバラエティに富んでいるようなのだが、ダイジェストで流してさっさと最終ステージに進む割り切りのいい展開。待ち構えていたのはボン婆さん。バーチャル婆ちゃん

肝心なのは修行により経験値を積むことではなく、精神的な在り方であると原点に立ち返らせること。婆ちゃんに全くボムは当たらない。調子に乗っていたことを実践形式の対戦で諌められ、ボムスター2個になったところでフレイムボンバーに勝てなかったことに気づく。ここで「ボムの力はボムにあらず、心にあり」の台詞が反復される。この作品の核は、一貫してここに集約される。そのため、シロボンがジェッターズとして戦い、経験を積み、ボムスターを手に入れたというタイミングでここに立ち返るのは必然的。ここでシロボンがボムスターの力を借りて覚醒し、ボン婆さんを実力的に凌駕して立ち直るというご都合主義の展開ではなく、この“気づき”によって今回の修行に区切りがつくというのもそれをよく表している。

原点を思い出したシロボンはフレイムボンバーに再戦を挑み、フレイムファイヤーボムに対して、新技バーニングファイヤーボムで見事勝利する。

冒頭で勲章を与えたのに、勲章を取り上げるぞと脅して部下をコントロールしようとするバグラー様は、まさにアメとムチ。

ムジョーにだれがついていくかで言い争うボンバー四天王。もっと四天王でまとまった活躍シーンがほしかったなあなどと思ってしまう。長兄のサンダーボンバー、お調子者なフレイムボンバー、天然で鈍臭いグランボンバー、マイペースなマーメイドボンバー、と個性豊かなだけに一人ずつ役割に殉じていくのが、シロボンの成長を描く構成の上ではきれいだが、とても惜しい!

シロボンにとっての「帰る」の先が既にジェッター星になっていたということと、16話タイトルの「帰ってきたシロボン」がここで具体的になるのが心憎い。

前回からの係り結びで、マイティとの言葉を思い出しながらシャウトにボンバーマンであることが好きだと宣言し、ボムスター2個を鼻にかける間の抜けた感じはそのままに再出発。と、あたかもここで物語が終わってもいいような雰囲気ではあるが、しかしジェッターズ2クール目はまだ半分も行っていない。ここから展開は更に加速していく。

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