『ボンバーマンジェッターズ』1話感想

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爆弾を武器に戦うゲーム『ボンバーマン』シリーズを原作とし、2002年から約1年に渡り全52話が放送された、『ボンバーマンジェッターズ』。

細部を忘れていたものの、思い返してみると印象深いシーンや物語に溢れている。良質なTVアニメーションといえば個人的に思い当たることも多々あったものの、どうにも巷ではアニメの話題や批評において、今作が筆頭に挙げられることは非常に稀である。

生みの親の会社であるハドソンが倒産して今は版権がコナミに移行していること、それに伴い以前ほどは積極的な製作やメディアミックス展開が行われなくなったこと、しかも昨今では視聴手段としては主流な各種サブスクリプションサービスで配信すらしていないことが要因として挙げられるのだろう。公式から出ていたDVD・Blu-ray BOXは現状は中古市場に流通しているものだけで、いずれも数万円単位で取引されているので、これで新規視聴者を獲得するというのも無理難題である。

しかし、久々に眠っていた録画データを引っ張り出して見返したら、やはりというか、かなり感銘を受けてしまた。うちに押し留めておくのももったいなく、せっかくこの場があるのだから、今回からその感想を書いていこうと思う。

 

1話 憧れのボンバーマン

昔の記憶の中で、「強くなれ」と言い、弟のシロボンを奮い立たせようとする兄マイティ。マイティの身におきた事件の発端を描きながら、この1話は、この『ボンバーマンジェッターズ』という物語を象徴する精神性や兄弟の関係を印象付ける回に仕上がっている。「ボムの力はボムにあらず、心にあり」という台詞や、「大丈夫」というマイティの口癖、別れ際のマイティからシロボンへの教えなどは、きれいなほど最終話の展開と円環を成している。

回想の中でマイティは「真のボンバーマン」なるものを弟に説いている。それを語る彼は伝説のボンバーマンとして宇宙を股にかけて活躍し、弟の目にも見始めた視聴者にも理想の存在として映る。対するシロボンは回想の中でも泣き虫であるし、修行でドジをするし、ボムの扱いをボン婆さんにもマイティにも諌められる。色々未熟な少年だ。

しかし一方で意気消沈する女の子を見るに見かねて風船ボムで励ます側面が描かれる。マイティは女の子を救出した後に涙を拭うように言って、その場を離れようとしていたというところにさりげなくこの兄弟の微妙な違いを匂わせている。また、冒頭の回想シーンで「強くなれ」という言葉をかけても、弟の涙を直接拭っていたわけでないことにも通じている。

そうした違いやシロボンが放つ「勇者の光」から、マイティの言う「真のボンバーマン」なる理想の存在についても、ある種の疑わしさが生じてくるわけで、これもひとつのテーマになっているのだから、この1話はたった20分弱に相当なエッセンスが詰まっている。

一方で、この1話はかなり異質な作りとも言える。シロボンはまだ故郷のボンバー星で実践経験なしの修行中の見習いボンバーマンであり、ジェッターズにはまだ加入していない。兄のマイティもシリーズを通して行方不明であり、彼の安否やその身に起きたことを巡って物語が展開していく。その点で、この1話は以降の物語のタイムラインでは二度と訪れることのない時間を扱った回であり、回を積み重ねていくごとにまだ何も起きていない1話の時間が視聴者目線でも振り返りたくなるような時間に変わっていく。

しかもジェッターズは、かなり大胆な嘘や不条理なギャグで楽しませるアニメという印象が強いのだが、この1話に限ってはそれも控えめである。辛うじてシロボンと、宇宙の悪党であるヒゲヒゲ団とムジョーのドジなキャラクターが基本的にはコメディタッチであることを提示しているのみ。ジェッターズの同僚でマイティの親友であるバーディの軽々しいジョークをふっかけている様子もあり、(半年後となる)2話以降の彼の言動と比べても、この1話からはマイティの失踪を境ににして切り離された時間を感じ取ることができる。

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