『ボンバーマンジェッターズ』48話感想

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第48話 激突!? ジェッター星!

ジェッター星に建設された基地にて、マックスはワープ装置をセット。ドクターアインは38話で先手を打って小型ワープ装置を守ろうとしていた様子が描かれていたが、発信機も事前に仕掛けておいたことから、その基地の場所を特定できた。科学者キャラのメカード、バグラー、アイン達は、基本的にボムを武器とする種族が主人公のアニメにおいて裏方に回りがちであるが、こうしたシロボンが葛藤する物語の幕間で独自に動いて、その駆け引きの結果が劇中の行動に結びついていくから、彼らとて前線に全てを任せきりという訳でもないことが実感できる。

ジェッター星の防衛はボンバーマン達に任せ、ジェッターズはジェッター星のワープ装置のある基地に向かう。B‐1で顔見せしたボンバーマン達を率いて、オヤボン、ダイボンらがMAシリーズと渡り合うのは、もろに「ここは任せて先に行け!」な展開であるが、あまりそれらしいウェットな台詞を叫ばせず、コスモジェッターでメンバーを回収しにきたシャウト、躊躇うシロボンを連行して自分のマシンで向かうバーディと、それぞれが自分たちでやるべきことを見据えて動いている。ベタな展開だが、だからこそ内輪なやり取りというよりも、迫りくる危機に対する緊迫感がきちんと伝わってくる。

バーディがジェッター星に戻る際に躊躇なくゼロに「何してんだ、行くぞ!」と声をかけて、ジェッターズ側に引き入れるのも、それまでのバーディの心の動きを追っていると、この局面でかなり重大な判断である。ゼロからすれば飛び去っていくコスモジェッターはかつて自分が操縦していたマシンな訳で、それでも今の自分にはただその場で立ち尽くすことしかできないでいた様子。そんな中で、引き入れるというのはゼロをもうこの時点でジェッターズとして認めていることになる。だから、バーディはシロボンが何しに気たんだと言った時に、(今までギャグでボコる描写はあっても)ここでシリアスな描写として珍しく彼を平手で叩いた。過酷な現実であるが、それから目をそらすのではなく直視するように。

侵入した基地で湧いてきた敵に、バーディが陽動を、ガングとボンゴが支援を、そしてゼロがボムで敵を刺す流れる連携の中で、今まで直接は描かれなかった旧ジェッターズ全員での任務がマイティの代わりをゼロとして再現される。シャウトとシロボンはそこでは手持ち無沙汰になってしまうし、シャウトはゼロの活躍を目の当たりにして「あれが正真正銘、ジェッターズのリーダー」と認めもする。もちろんこれは、リーダーとしての大変さや、あるいは戦力面ではマイティに及ばないと己を知るシャウトの率直な感想だろうが、作品を追ってきた身からすれば彼女がいなければジェッターズが切り抜けられなかった局面だって今まであった。

一方のシロボンはその光景を目の当たりにして、マイティの背中を追い続けてきた今までの日々が再生される。ジェッターズのリーダーとして戦うゼロの後ろ姿を見て、ここでようやく「もう泣かなくなったよ」と約束を思い出して、ゼロを直視できるようになる。シロボンからすれば、共に試練の塔に挑んだ時に兄の面影を疑っていても、あの時はあくまでボンバーゼロとして。マックスからその事実を告げられた直後には衝動でその場を立ち去ってしまい、またその後も自ら対話を拒み続けてきた折に、こうして実際にジェッターズとして戦う姿を目にして初めて、ついぞ果たされなかったマイティとの再会と、思いがけずもたられたゼロとの再会、を同時に受け止めることができたのだと思う。

ここでハッキングをするためのコードが胸から出てくるゼロの身体の描写が出てくる。これは当時見ていて、マイティが帰ってきた!と言わんばかりのジェッターズの活躍の直後に、これがお披露目されるものだから、ずいぶんと苦しくなってしまった記憶がある。けっきょく、ゼロはマイティに限りなく近い存在であってマイティではない。そのことを一番良く知るのは、マイティを殺した記憶があり、彼から記憶を奪ったことを自覚しているゼロ自身。アンドロイドの身体はその残酷な証拠品だ。そして本当の仇はマックスではなく自分なのだと告白する根拠こそ、オリジナルのマイティにない、紛れもなくゼロ自身の記憶であるということが、あまりにやるせない。

シロボンは制御装置を止めるのではなく、ジェッター星のワープ先の座標をずらすことで難を逃れることに成功。シロボンがマイティの目覚まし時計を遅らせた思い出から着想を得ての行動だったが、ゼロの出自と正体を知ってなお兄ちゃんはケチだったという本当の兄弟らしい会話を一瞬繰り広げても、その後の「やっぱり兄ちゃんは死んだんだよね」という悟った様子によって、ここで言っていた「兄ちゃん」は、相手(ゼロ)に対してでもあれば、もういない兄ちゃん(マイティ)との思い出を回顧して、とも受け取れるような微妙なニュアンスが生じてくる。マイティとこうして任務をともにすることを「夢だった」と語る台詞は、既に叶わない過去形なのか、今しがた終えた現在完了形なのか絶妙に紛らわしいが、シロボンがマイティの死を受け入れている以上は前者になる。「せめて形だけでもマイティに近づけろ」とバーディから託されたバッジをゼロに「あげる」と言って渡すのも、それはマイティに限りなく近いゼロだから、「返す」のではなく「あげる」のだろう。この1話の最中、シロボンの心の水面には荒波どころか嵐までもが吹き荒れていると思わせられる。

ボン婆さんからゼロのことを聞き出すために家に訪れたものの、口が滑って手伝いを買って出てしまうミスティ。ミスティは宇宙盗賊で自由気ままに生きてきかに見えて、かつてマイティから勧誘された時のように思ったことを率直に言うことができない性分なのだ。ここでもそれが発揮されてしまうし、ゼロからマイティであることを告げられなかったことを誰に愚痴をこぼすでもなく独りで拗ねていた。だからといって、ここまで度々思っていた通りゼロと別れてボンバー星を出ていたらそれはそれで一生後悔することになっていたのだろう。ミスティがマイティとシロボンをよく知るボン婆さんと共に、ゼロとシロボンが奮闘する姿を最後まで目撃することになったというのは、素直でないなりに得た僥倖だったと思いたい。

前回に続いて、今度は吉田玲子による脚本の最終回であるが、マイティの記憶を持ったゼロに対するジェッターズの面々の反応や、シロボンの迷いと受容、そしてそれ受容して新たに巻き起こる複雑な内情といった膨大な感情の動きが、1話のうちに活写されている。これまでガングやボンゴにスポットライトが当たる横道にそれた回をやりつつ、23話「シャウトの涙」や45話「ゼロとシロボン」のように、クライマックスの大見せ場でないにしろ、そこへ繋げる回で微妙な距離と隔たりを合間に漸近するキャラクターの心情を捉える仕事ぶりに、最後まで脱帽させられたのであった。

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