第46話 ボムクリスタルの秘密
シュヌルバルト内部に潜伏することになってしまった156〜158号は(通信の自由もきかないようで)宇宙に放おったメッセージボトルに望みを託す。今となってはヒゲヒゲ団のシリアスなシーンにおける数少ない癒やし要素。
マイティの急所を突き、記憶を奪い取った手を見つめるゼロのカットは、表情が動いていないのにとてつもなく重々しい。
マイティは弟の前で頼れる兄、優れたボンバーマンとして振る舞おうと心がけていた。かつて「ボンバーマンは強くなくちゃダメなんだ」と言いつけるも、シロボンは泣き止んでくれず、サンダーボムでなんとかして泣き止ませ、胸をなでおろす様子のマイティ。1話で描かれた頼もしい兄としての顔の裏で、シロボンが見落としてたマイティの苦衷が暴かれていく。
シロボンを誘って一緒に野球をした日も、弟に惨めな思いをさせたことを詫びていた。「好きなら人がなんと言おうと諦めちゃだめだ。でもそうじゃなかったら、いくら続けようと思っても続かないよ」。敗北を喫してジェッターズを抜けたシロボンを一度は奮い立たせるきっけかになった言葉であるが、果たしてそれを告げていたマイティは自身の好きなことを続けていたのか。
マイティは、帰郷した日にシロボンが女の子を励まそうと繰り出した風船ボムを見て、ジェッターズのリーダーとして宇宙を駆け回ることを辞する決意をしていた。7つ目のボムスターを持っていなかったにも関わらず、伝説のボンバーマンとして振る舞い続けなければならなかった。シロボンが壁に突き当たっているのと同じで、強くなければという思いに囚われていた彼は、ついに7つ目のボムスターはないという結論に達する。修行に明け暮れたマイティが諦めるきっかけとなったのが、まだ見習いボンバーマンだったシロボンの他人に対する思いやりを目の当たりにして、というのはきれいだが残酷な道理である。
しかし、今はそのシロボンが同じく6つのボムスターを手に入れ、マックスを倒さねばという境地に達している。シロボンが、最後の別れ際にマイティから説かれた優しい心の教えを思い出し、他人を救うのはまだ先の話。
宇宙漁師になっていた3話のバギャーが再登場し、156号の流した情報をジェッターズに伝達。アチョーに引き続き、人助けをやる類の話で、そこでできた縁が繋がっていく流れにはグッと来る。実際、メカードの企みはここまでバグラーとの会話で視聴者には伝わっていたものの、ジェッターズはメカードが何のためにクーデターを起こしたのかすら知らなかった。ボンバー星に迫る危機を事前に察知できたのはあまりに大きい…が、今回そこを狡猾なマックスに付け込まれてしまう。
ボムクリスタルを守るために飛び出したボン婆さんが格好いい。こういう若い頃の武勇伝がちょい出しされてきたキャラが、年老いてなおその実力を示す展開もグッと来る。(2回目)シロボンを背負っても軽快に飛び回り、その後を同じスピードで尾行するマックスという関係で、シロボンはまだまだボン婆さんにもマックスにも、戦闘データのもとであるマイティにも実力的な面では遠く及んでいないこともわかる。けっきょく、マックスとはボン婆さんが互角以上の戦いを繰り広げ、体力の衰えに付け込まれたピンチをゼロに助太刀される展開になる。1年かけて形上は6つのボムスターを手に入れて目上の人達に並んだかに見えて、まだまだ主人公は途上という様相を描いてくれるのは、ジェッターズが描いてきた成長と積み重ねのドラマを考えれば、とても誠実だと思う。
ゼロを故郷の星に置いて自らは去ろうと考えていたミスティだったが、バーディの姿を見て尾行する。マイティの親友であるバーディが何をしにきたのかと気になったのもあるのだろうし、バーディがそのことを知らなかったのなら教える気があったのかもしれない。いずれにせよ、ボンバー星から立ち去ることで振り払おうとしていたマイティへの未練はまだ燻っているからこその行動だろう。
マックスは、この時点ではボン婆さんとゼロの間の秘密であったゼロ=マイティの事実を暴露する。場に居合わせた者もほとんどは察していることではあったものの、ここで決定的に事実を突きつけられる形に。直前の、「美しい兄弟愛」発言といい、これまでの言動(ジェッターズと組んだムジョーを煽る、シロボンに自分がマイティの仇だと告げる等)を見ても、マックスは相手を挑発する狡猾さがあり、追い詰めた際にゼロたちに動揺をもたらす目的で発したのだろう。
抱いていた疑念が確信に変わったシロボンだが、ゼロと感動の再会とならず、今度はシロボンの方から走り去ってしまう。一度は死んだと思って受け止めた存在が実は異なる形で生きていたと知って、冷静に素直に受け止められる方が難しい。年の功を感じさせるボン婆さんでさえ前回ゼロの正体を知り、静かに震えていたのだ。しかも、その存在を認めるには、再び異なる形でマイティ本人が死んだ事実を受け止めなくてはならないのだ。
第47話 それはそれは恐ろしいメカード
OPのバーニングファイヤーボムが、今回からシャイングファイヤーボムに変更。熱心に見ているアニメの視聴者にとって、OPに出てきた新要素が本編に満を持して出てくることを期待するのは世の常とも言える。この「ホップ!スキップ!ジャンプ!」に出てくる映像は本編の展開を1分半の短い尺の中に印象深く象徴させたもので、そのまま本編に出てこなかったものもある。ジェッター星の夜景をバックに衝突するゼロとマックスなんていかにも格好いいのでそれはそれで見てみたかったし、シロボンがゼロとボム技で正面から勝負している画なんてのもクライマックスにうってつけに見えて実は本編にないのだ。とはいえ、このシャイングファイヤーボムをマックスに対して使わないというのは、物語のテーマを考えていくと必然的としかいいようのない答えであるので、OP映像をいい意味で裏切ってくれる部分である。
どういうつもりで今まで、と取り乱すバーディがあまりにも痛ましい。ゼロがマイティだというのなら怒りが湧き上がってくるのも当然である。(バーディの目線では)失踪して以来、自分も荒れ果てた生活を送りながらも必死で探し回り、弟にも心配をかけ続けていたというのに、旧知のミスティと共に過ごしながら何の連絡もなしに、今になって半ばアクシデントで無事が発覚したのである。これまで不在のマイティに対して抱いていた生存への切望や不安のすべてを、この瞬間はまるごとふいにされた気分になってしまった。それだけバーディにとってマイティは重い存在なのだ。
一方、シロボンは…軽いノリで道場の看板を立てかけていた!このシリアスからゆるいノリへの軽快な移り変わり。物語がクライマックスに差し掛かっても忘れずに挿入されるのが頼もしくもあり、気丈に振る舞おうとするシロボンの強がりが印象付けられる。
シャウトはシロボンに兄の生存を告げるも、当のシロボンは兄ちゃんは死んだと言って聞き入れようとしない。シロボンの中にある綯い交ぜの感情がありありと見えてくる。死んだと思っていた人が生きていると知ったのなら、かつてシロボンがマックスを兄ちゃんだと思い込んだときのように、縋りたくもなるはずだ。しかし、シロボンはここまでマイティの死を受け入れ、ゼロがアンドロイドであることも知っている。ゼロもゼロで身体が別の機械である以上マイティ本人とは言い切れないが、その人格と記憶を有している以上、死んでなおも生かされていると言える特殊な存在であり、どのように向き合えばいいかなんてすぐにわかるはずもない。かくいう物語を追っている側の自分も、ゼロをどう捉えればよいのか、あるいは各キャラがどういう心情でゼロと接しているのか、見ていてその複雑さ自体に頭が沸騰しそうである。
シャウトが隊長職に任命する理由が現場から一番遠いからだというオヤボンさんはシュヌルバルト突入時のムジョーに似ている。接点はなかったが、多くの弟子や部下を抱える者同士気が合うのでは?と考えたくなるキャラ描写。
マイティからジェッターズを辞めるつもりだったことを知らされていなかったバーディの「なぜ俺に何も言ってくれなかったんだ!」と叫ぶのが見ていて辛い。バーディはマイティがいなくなった後、自分の力全てをその捜索に向けようとしていたにも関わらず、親友とみなしていた相手から本心を打ち明けられていなかった。それでもやけにならず捜索を再開するように切り替えられるのが、シロボンやシャウトの命を預かると宣言した彼なりの振る舞いであり、あるいはそれが今思いつける気を紛らわす方法だったのかもしれない。
ミスティもミスティで、ゼロからマイティであることを告げられなかったことに暗い表情を浮かべていたが、それでもボンバー星の危機を目の当たりにし、この局面で何かをしなければと思い立つ。マイティとゼロとの縁がこの状況を作り出したと言えるわけで、この時に助けたボンバー人の女の子が、シロボンが1話で風船ボムをプレゼントしていた子であるというのも、数奇な縁を感じるめぐり合わせ。
今回登場したMAシリーズは、MAXを作る過程で生み出された試作機。この土壇場で大盤振る舞いとも言える新たな敵の投入であるものの、子供っぽい個体、大柄な個体、そしてリーダーという個性分け、演者が多くの合体ボンバーを演じた内藤玲氏に加え、渡辺慶氏、金子はりい氏、竹本英史氏らボンバー四天王との兼役であるのを考えれば、これまでの敵の集大成的な匂わせがある。
ボンバー星の祠の下の地中核にあるため、それを狙いにボンバー星に再び侵攻を仕掛けてくるのだと思わせてからの、ジェッター星侵攻に、38話の小型ワープ装置を利用し、星で星を破壊するというまさかすぎる計画。宇宙に一つしかないものを盗むことを阻止する話という基本構造だったものが、メカードの目論見が明らかになるにつれて、殺人、クーデター、監禁と一線を踏み越えてきたものの、ここにきて大量殺戮に直結する強硬手段なので、とんでもない飛躍。番組のコンセプトを考えてもこれを予想するのは無理だろう。ゴルフボールで卵を割る表現が、今までのジェッターズで用いられなかった比喩なのもあって、インパクトが大きい。
脚本の話をすると、今回がまさきひろの最後の担当回。他の脚本回と比べてやや変わり種なギャグ描写(弾き語りをするシロボン、敵と田植えするグランボンバー回、ギャグに使われる回想マイティ、西部警察パロのダイボン回等々)や番組のフォーマットから崩しにかかる回(14話「栄光のヒゲヒゲ団!」、36話「密着!ジェッターズ24時」)が印象的だっただけに最後の仕事で9割方シリアスというのも惜しい気もするが、最終決戦へ向けて緊張感が高まる点では同脚本の24話「電撃サンダーボンバー!」でやったことに近い。
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