『ボンバーマンジェッターズ』40・41話感想

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第40話 クーデター勃発!

メカードがついに反旗を翻し、前回洗脳したヒゲヒゲ団員を使役して、ムジョー、バグラーを追い詰める。バグラーはここぞとばかりにムジョーを罠の落とし穴で脱出させるも、自らは捕虜となってしまう。

非常用に光線銃を所有していたらしいが、ここまでジェッターズとの戦いでは一度も使用されていない。1話に出た長距離熱線砲もあくまで威嚇のためだったので、ヒゲヒゲ団は殺傷武器の類は基本的に使用を許可されていない。マックスもハイパープラズマボムでムジョーを殺害しようとするなど、メカードの支配下に置かれたヒゲヒゲ団はここから箍が外れていく。

命がけの戦いになることを見越して、メンバーにジェッターズ脱退を勧めるアイン。しかしシロボンのマックスを倒さねばという思いがそれを拒ませる。シャウトはそんなシロボンを見かね、そしてバーディは二人を守るべく、ジェッターズに残ることを決意する。ガングとボンゴは滞納した家賃を理由に問答無用で残留するが…それはともかくとして、この場面はジェッターズの立ち位置がよく現れたシーンである。シロボンはマックスへの復讐心に駆られたまま、シャウトはそんな彼を見放すことができないが、バーディはメンバーの中で最も成熟した視点でマイティのような犠牲は出すまいと実質的なリーダーを買って出るのだ。

今回はメカード視点でこれまでのヒゲヒゲ団内部での工作活動が描かれる。ジェッターズがマックスと初めて邂逅した時や、ムジョーが偽の宝の地図を掴まされた時、ムジョーが組織内で追い詰めていった時、その裏には当然そこにメカードの影があったのだが、なんとエレファンの赤ん坊をジェッター星に送り、キャラボン星に彼らを向かわせ、ムジョーが任務に失敗するように仕向けたのも彼の仕業だったと発覚する。そういえば、あのヒロシ(キャサリン)がどうして脱出カプセルに乗って都合よくシロボン達の下に墜落してきたのかは流されてはいたものの、状況的にムジョー達はあり得ず、あのお母さんもそんなことをした素振りはなかったので、ここは盲点になっていた伏線回収である。

また、合体ボンバー四天王達も実のところメカードの細工により本領を発揮していたわけではなかったことが語られる。シロボンが辛くもこれまで撃破できたのもそのおかげであったというのは、ここにきて気づかずにメカードの手の平だった彼が本当にマックスを倒すことができるのかという点により疑念を生じさせる。

メカードは発明のアイデアを奪われたと思い込み、こんなにも周到な計画でヒゲヒゲ団を乗っ取ったというのに、肝心のバグラーは当時研究に携わっていたメカードを覚えていないというのが残酷っちゃ残酷。ここまでバイオボム、ボムエレメントといった単語が出てきていたが、研究において重要なボムクリスタルこそ一種のマクガフィンであると設定され直す。作品のテーマである「ボムの力はボムに在らず」の言葉を彷彿とさせる形で、ここでバグラーの口から「ボムの力はボムエレメントの中にはない」と語られるが、バグラーを凌ぐべくボムクリスタルに眠る力を手に入れようと躍起になるメカードは作品の精神性に真っ向から反した悪の造形。些か極端すぎる嫌いはあるが、ある種作劇に便利な「行動力と技術力のある小悪党」にすることで割り切っているとも取れる。何よりもシロボンがこの物語を通して対峙するのは、このようなわかりやすい悪ではないのだ。

ヒロシの一件を思い出したところに、アチョーが再登場し、ムジョーの窮地を救う熱い展開が。身体が真っ二つというけっこうグロテスクな死に様を偽装しているが、半身はムジョーの色違いで見た瞬間思い当たる人物が浮かぶ風変わりな再登場の仕方だった。

 

第41話 新生! 闇のヒゲヒゲ団

ヒゲヒゲ団は前回から目的のためなら殺人や監禁も厭わず、ついには宇宙に一つしかないもの目当てにいつものノリで現れることもなくなった。子供向け番組だから表現では踏み外すことはないものの、メカードが牢屋を殴打して脅しつける様は実質的にバグラーに対する拷問みたいなものだろう。

負傷したムジョーはしばらくジェッターズの本拠地で介抱されることに。いままで敵だった相手に世話になるなんて屈辱的かつ気まずい空気かもしれないが、迷惑をかけてすまんと言うムジョーに、それを聞かなかったことにするバーディのやり取りは、今の非常事態においてはなんだか妙な味わいの清涼剤だ。

アインはヒゲヒゲ団の識別装置から電波を発していることを発見。ヒゲヒゲ団のツノにそんな機能があったなんてと突っ込みを入れたくなるが、あれだけの数の団員を管理するのなら個体の識別と位置情報の捕捉は搭載されてしかるべき機能であるし、これが状況の突破口になるのはたしかに理にかなっている。

一方その頃、ヒゲヒゲ団もジェッターズもこれまで通りとはいかなくなったというのに、BARのママはしたたかに平常運行。これまでのツケの請求の先送りを取引材料に、シュヌルバルト内にある店舗から外部への封鎖を解除するようメカードに要求。ヒゲヒゲ団のクーデターを機にこれまでと組織の体制図が変わったとはいえ、おそらくテナントで経営している店側からすれば、取引先の騒動に巻き込まれ、横柄な条件を一方的に押し付けられていたので当然の要求である。ママは強し。

これまでジェッターズの物語の謎に迫る過程で印象的な存在感を放ってきた名脇役ナイトリーがここで退場。当時はこれがショッキングだったが、この後の展開もそれを上回ってショッキングで息をつかせてくれない。

マックスはゼロの復活に焦るメカードに「私はやつより劣ると?」と返す。細かな描写で考えすぎかもしれないが、マックスの出自を考えると、誰よりも強くなければならないと象徴しているかのような彼の意識は、後のマイティをめぐるとある事実にも影をもたらしているような気もしてくる。

ここまで溜めきててついに、マックスとゼロが別人であることが発覚。ミスリードの描写はこれまで度々挟まれてきていたので、そこに乗せられたら、まんまとマックス=ゼロは同一人物で、ひとつの身体に複数の人格があったのか、マックスとしての記憶を失っていただけなのか、といった罠にかかってしまうことだろう。一方で、両者は見た目こそ同じだが相反する要素も散見されており、マイティと近似する特徴と合わせて、これが大きな混乱や戸惑いを生む。それは単にAだと思ったらBだったという表面的なミスリードなどではなく、実はマイティは生きているのでは?という微かな望みにかけたくなる効果ももらしている訳であり、非常に巧妙な筋書き。当時も再見した今も感嘆とさせられた。

ゼロはミスティを守る理由を問われ「忘れ物をした気がする」からだというが、絶体絶命の危機に瀕して、答え合わせのように自らの元から去っていくミスティを皮切りにフラッシュバックが訪れる。

記憶の中では、どういうわけか自分自身に襲われ、次の瞬間には今度はメカードに襲いかかっているという不可解な光景を経て、今度は帰郷の日に隣で軽口を叩く親友、そしていつも泣いてばかりいた弟の姿へと遡る。それは見る側にとってもゼロにとっても、第1話の過ぎ去ってしまった時間にほかならない。すべてが記憶の主の目線で捉えられた映像にして、時系列を遡っていき最後にようやくシロボンの笑顔が映るカットの構成は、語り手の不在と時間の逆流が交錯するトリッキーなモンタージュだが、はじめ呆然としながらもついに記憶の主に同期してしまう。語り手のエモーションで直に揺さぶることなく、喉の奥が締め付けられたような感覚を残すこの語りは、どうかしているというほどに凄まじい。

「僕はマイティ」と言うゼロだが、ここまでのゼロの状態を見ればそうとは言い切れないのは自明で、喜ばしいばかりの死者の帰還にならない。物語は二段どころか三段と構えている。現にここでシロボンと涙の再会とはならず、彼はミスティと共に逃げるように戦場を後にする…。

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