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どうもワタリです。
新年2発目の映画レビューは昨年末に公開された邦画
「DESTINY 鎌倉ものがたり」です。
ネタバレしてますのでご注意ください。
48/100
一言あらすじ「妖怪幽霊とドタバタした後に妻を霊界まで助けにいきます」
邦画を劇場で見るのは鋼の錬金術師以来。
山崎貴監督作品は「寄生獣」前後篇、
「STAND BY ME ドラえもん」を映画館で観たのと
「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」をテレビ放送で見たぐらいです。
予告には「鎌倉に住むことになった新婚夫婦が繰り広げるスラップスティック」の前半、
「黄泉の国に連れ去られた妻を取り戻すために夫が奮闘する」後半が紹介されています。
呆れたことに、本当にこの説明で済むことしか展開しないのです。
こっちの予想を上回るドンデン返しとか、
予告では隠されていたとっておきだとか、そんなものはほとんど無かった。
予告では隠されていたとっておきだとか、そんなものはほとんど無かった。
ドタバタ劇なのに勢い不足の笑い
仮に予告を見ていなくとも、捻りのない話運びだという印象は拭えません。
前半はコミカル描写に比重を置いているのですが、
ギャグがかなりの割合でスベっている。
いきなり軽いノリで担当編集が余命一ヶ月になったり、
亜紀子が明らかに本物の妖怪達をコスプレだと思い込んで買い物したり、
その買った食べ物が毒入りであわや死にかけたり、
霊体離脱しやすくなったからマスクで予防したりと反応に困るようなコミカルさ加減。
警察に操作協力を要請されるパートでは、
被害者を降霊させて変な声で証言させていましたが、笑っていいのかもわからない。
やたらと聴取に口を挟んでくる子供がいたけど、全く話に関わってこない一発屋。
正和が家の正面を走る列車を見てもトリックに気づかないで、
わざわざ駅に出向いてからやっと気がつく下りもよくわからない。
このようにギャグとして演出しているのか判断しかねるような描写も多数。
明らかにウケを狙ってキャスティングされた木下ほうかには多少フッと笑えましたが…。
ゲラゲラ笑えるような面白さは基本なかったような気がします。
唯一笑い声をだしてしまったのは、亜紀子の服の匂いを嗅ぎ出す要潤ぐらいでした。
この前半部分では人と妖怪・幽霊が共存する生活風景が描かれており、
背景に映り込む異形の住人たちや、死者を案内する死神が出てきます。
現世に留まらせる手段があることや、江ノ電が霊界への道になっている土地柄、
警察も不思議な力を利用している様など後半に繋がる要素も紹介されています。
面白みのある描写は目白押しなので、そういう面では興味をひかれました。
でも、やっぱりスラップスティックとしてはあまり面白くない。
笑わせに来ているのかわかりづらい地味なギャグに加えて、
なんの変哲も無いリアクション芸にも辟易するばかり。
登場人物は驚いた時には「ぎゃー!」「えー!」と叫び、
怒りを表すにはあからさまに大声を出すというこの単調さを面白がるのはとても難しい。
きちんと特殊な舞台設定の提示はしていたけど、笑わせる部分で躓いているように感じました。
亜紀子を黄泉の国に送る制作者
後半部分は攫われた妻を救うための奮闘が描かれているのですが、
突っ込めばキリがない強引な話運びで、集中できませんでした。
前半部分で死の概念が割と軽いものとして描かれていたので、
妻が霊界に連れていかれたというシチュエーションに重みを感じづらいし
連れ去られた亜紀子の苦しみや置かれた状況が描かれないまま正和ばかりを映すので切迫感も覚えにくい。
悪役の天燈鬼も登場の直前にようやく存在を説明される程度。
(前半で姿が描かれた絵巻出てくるけどそれだけ)
(前半で姿が描かれた絵巻出てくるけどそれだけ)
どれくらい悪いやつなのか掴みづらいため、
ここまで背景が描かれない悪役、絵本の桃太郎に出てくる鬼ぐらいじゃないだろうか。
自分でペラペラと「亜紀子の前世と結婚できなかった」と語ってくれましたが、
何が彼を亜紀子に執着させているのかは全くわかりません。
展開も作り手の都合を感じる場面が多く、
特に「想像すれば何でも作れる」というのはいくらなんでも制約が曖昧で受け入れづらい。
亜紀子が連れられる前に妖怪への転生を検討しないのも不自然。
体が見つかったのであれば不正なのだから死神局とやらは取り消しにすべきだし、
亜紀子の体を拾っていた家族達も平謝りする場面で出番が終了する不消化感。
天燈鬼のみならず制作者サイドも亜紀子の魂を黄泉
の国に持っていくための
の国に持っていくための
苦心をしている様子が感じられてなんだか残念でした。
黄泉の国のCGは大画面で観れて良かったです。
木造の長屋がびっしり集まっている猥雑さと背景の広々とした空の迫力には
スケール感を覚え、ワクワクさせられました。
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天燈鬼の根城にあっさり侵入できてしまうセキュリティの緩さや
想像で簡単に脱出できてしまう黄泉の国のいい加減さが目立っていたので、
もっとこのパートには尺を割いても良かったのではないかと思います。
わざわざ鎌倉にする必要性
あとは個人的に気になったのが、
タイトルに鎌倉ってあるのに鎌倉の情緒的な風景が全く活かされていないところです。
タイトルに鎌倉ってあるのに鎌倉の情緒的な風景が全く活かされていないところです。
冒頭の越してくるシーンと妻が消えてから思い出を辿るシーンで海岸が出た程度。
妖怪や幽霊に所縁のありそうな古都だから鎌倉ってことなのでしょうが、
大体が一色宅のセットやただの住宅街ばかりで、
しまいにはディズニーランドっぽい名前の遊園地まで出てきて
求めていた雰囲気はまるで足りない。
鎌倉の特色を感じられず拍子抜けでした。
本作の良心、死神
「◯◯っス」口調やウィッグ感満載の白髪、子供向け番組に出てきそうな高い声、と
列挙すると馬鹿げているような印象を受けるのですが、
この全てが個性と魅力に繋がっていて物凄く愛おしいキャラクターに思えました。
安藤サクラさんは、作品の色合いに自然と合った演技をしてくれていて
脇役でありながらインパクトに残る高い技量の持ち主なんだと再認識させられましたね。
懇願されて引き気味に魔界転生を提案する様子、
亜紀子の迎えが遅くなり謝罪しながらやってくる姿、
正和に怒りをぶちまけられても崩さない仕事人としての矜持など
出てくるシーンすべて、彼女を目で追っていて楽しかった。
裏を返すと事前の予想を大きく上回ったのはこれぐらいなんですけどね…。
堺雅人の安定感と高畑充希のチャーム
本作は些細な役回りであっても橋爪功、薬師丸ひろ子、三浦知良といった
キャストがなされていて、見たことある人ばかり脇を固めているので
俳優陣はかなり力が入っていることがわかります。
知名度と実力とを両立しているから選ばれたであろう主演お二人も期待通り。
特に高畑充希はおかっぱ頭にイモっぽい格好という地味なドレスアップが似合う上に、
夫にたいする惚気を見せるシーンが悉くかわいい。
腕に抱きついたり、肩に頭を乗っけたりする仕草にはあざとさを感じる一方で、
そうした感情すらねじ伏せる魅力もまたありました。
実は彼女の映画作品は「女子―ズ」「アオハライド」「植物図鑑」「ひるね姫」と
けっこう観ていたのですが、純粋に彼女を鑑賞したいというなら
この作品が一番オススメだと思います。いや不純か。
堺雅人は相変わらず堺雅人なのですが、
そうした地の雰囲気で作品に当てはまるのがやはりうまいなぁと思います。
前半部分では目立って良いと感じる演技はありませんでしたが、
後半の亜紀子を思いやる表情や動作は感情移入させる力に溢れていました。
亜紀子の黄泉の国行きを引き止められず、悔しさ故に手を振るうシーンが特に印象的。
あのシーンはカメラワークがちょいとダサいと思うのですが、
堺氏はぶつけどころのない苛立ちと悲しみを全身で表現されていたと思います。
個人的に彼の声質もよくて、知性を備えていながら軽々と喋れるあの声のおかげで
割と頻繁にある説明的で冗長な台詞も飽きずに聞いていられた気がします。
まとめ
思いもよらない歓迎を受ける貧乏神のエピソードや
化け物になってしまい妻子に近づけない堤真一の悲哀などは
正直うるっとくる所もありました。
納得のいかない亜紀子の霊界行きにしても、別れのシーンで爆発する
高畑充希の愛おしさと堺雅人のやるせなさに心を動かされました。
しかし、退屈な時間がそれを上回ってしまうし、
上記の良いと思ったシーンも「良かったのはその場面だけ」というものばかり。
上記の良いと思ったシーンも「良かったのはその場面だけ」というものばかり。
良い話、ちゃんとした音楽、高品質な美術とCG、豪華な役者。
それぞれ中々の素材を集結させた映画なのに
退屈な印象に終わってしまうのはやっぱり深みを排除したつくりだからでしょう< /b>。
山崎貴監督作品は冒頭で述べたとおり、わかりやすさが物凄く優先されているようです。
全体としてわかりやすいストーリーのために細かい話の整合性がおざなりにされ、
ワンシーンごとのわかりやすい演出のために無駄にも思える味付けが施され、
逆に必要な物がカットされてしまいもする。
逆に必要な物がカットされてしまいもする。
そんな感じです。
たとえば、推理パートは徹底的に簡素化され、
冷静に考えると多くの疑問を残してしまっています。
冷静に考えると多くの疑問を残してしまっています。
仮にもミステリーなのに物的証拠が一切提示されずに犯人が逮捕されているのは
流石に簡素化しすぎだろうと。
流石に簡素化しすぎだろうと。
細かいことを考え出すとキリがないので、
あくまで軽い娯楽作として鑑賞すべきだったのかもしれません。
幸いなことに、致命的に酷い映画ではありませんし、
見所はきちんとわかりやすく配置されています。
大量に使われるCGをはじめ、よく見かける俳優や心温まるお話はちゃんと収録されています。
しかし、一時にハートウォーミングなお話を見て感動できたとしても、
作品内世界に裏付けや奥ゆかしさを感じられない以上、その後に残り続けることはないでしょう。
この映画は、観て、楽しんで、暫くして忘れるという程度のもので、
アート(作品)というより消費物だと結論付けました。
そんなわけで山崎貴監督は、あくまで消費映画監督とみていますが、
手がけている作品のビジュアルや役者の顔ぶれは他の邦画の追随を許さないレベルなので
うまい脚本家や演出家と組んでくれたら、
映画ファンも唸らせるものが生まれるのではないかと密かに期待しております。
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