ピーターラビットの印象が悪くなる問題作『ピーターラビット』レビュー【ネタバレ】

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こんちには、左利きAB型であることに対して特にメリットを感じていないワタリ(@wataridley)です。

今回はイギリスの人気キャラクターであるうさぎさんが活躍する実写化映画「ピーターラビット(原題: Peter Rabbit)」をレビューします。
ピーターラビットのおはなし (ピーターラビットの絵本 1)
ビアトリクス・ポター
福音館書店
2002-10-01

 

 

イギリス生まれの可愛いマスコットが織りなすほのぼの系(?)と言えば、今年の初めに観た「パディントン2」の素晴らしいクオリティにやたらと驚愕させられました。

ピーターラビットは、日本ではパディントン以上に知名度があるキャラクターですし、古い作品を掘り起こしてでも実写として作った事には恐らく意図があるのだろうと思っていました。

そして、いざ蓋を開けてみたらあまりの辛辣な展開にびっくりしました。

イギリスの穏やかなる田園風景をバックに繰り広げられるは、ピーターラビットという名の暴れん坊と彼を駆逐しようとする人間による抗争。

広く認知されているキャラクターを用いて、新たな試みに乗り出した。そう思って最初のうちは、楽しんでいました。

しかし、これが終わってみると全く入り込めない自分がいました。奇抜なものを見て面白いと思いながら、別にそれに入れ込むほど好きにはなっていなかったのです。

以下に、没頭できなかった理由を分析していきます。

ネタバレはもちろんのこと、今作を好きな人にとってはちょっと辛辣な感想になっています。それを承知の上で読んでいただけると幸いです。

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40/100

一言あらすじ「うさぎさんが人間に嫌がらせ」

良かった所: 動物がキュート

まず、本作の良かった点から触れていきます。

ハッキリしているのが、動物たちの可愛さでしょう。
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ご存知ピーターラビットをはじめ、妹のフロプシー&モプシー&カトンテール、いとこのベンジャミンといった家族も出てきて、賑やかな会話劇を繰り広げます。彼らの毛並みの表現は実在していると信じ切るぐらいに自然ですし、表情にしても豊かでありがなら過度にデフォルメされずに動物らしさを振りまいています。

「パディントン2」の熊の存在感にも驚きましたが、「ピーターラビット」は常に何匹かが画面にいてくれるので、画面の華はこちらの勝ちです。

中でも、個人的に注目したのは妹の一人カトンテールのキャラクターです。とにかくやんちゃで、はしゃぎまわって骨折することも厭わないほどの胆力の持ち主である彼女。
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

声は「スター・ウォーズ」新シリーズのレイ役でお馴染みのデイジー・リドリーが努めています。デイジーは、数々のインタビューでも茶目っ気のある発言をしたり、明るい気質であることを伺わせてくれるのですが、それがカトンテールのキャラクターにもしっかりとマッチしています。白いボディにちょっと尖った声質がギャップを感じさせてキュートですし、叫んだり、力んだりする様子含めて気に入りました。

本作の見どころとして挙げられるうさぎと人間の争いをギャグとして描写する作りは新鮮でした。可愛いキャラクターとリアクション芸満載の人間が、一方に爆弾を投げたり、一方が電気ショック死させようとする実写映画って思い浮かばないですよね。試み自体は評価しているところではあります。

特筆すべき良かった点は以上です。

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ピーターラビットの印象が悪化する短所の数々

この映画、コンセプトとして「かわいい動物VS人間」の図を打ち立ててコミカルに描写しようとした所は良かったんですよ。
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

ただ、これをピーターラビットでやる必要性が最後の最後までわかりませんでした

こんな事を言っておきながらお恥ずかしい話ですが、自分は実は原典となる絵本を読んだことがありません。CMやグッズに描かれている可愛いうさぎさん程度の認知でした。

しかし、こんなに激しい話ではないということだけはわかります。世の中としても、ピーターラビットに求めるものは、マスコット的なキュートネスであったり、心落ち着く穏やかな雰囲気であったはずです。

古くから親しまれ、イメージも人口に膾炙している。そんな中で「敢えて」踏み切った意図が全く伝わらないのです。

映画で繰り広げられる激しい映像や、生々しい悪戯に及ぶ彼らの姿を「新たなピーターラビット」として立てたかったのでしょうか?

それにしても、全く魅力を感じられず、寧ろ自分の心象は悪化したというのが本音です。

何が具体的にダメだったのかを、以下で分解して記述していきます。

 

ひたすら可哀想なマクレガー

本作で最も出演時間の多い人間トーマス・マクレガーを演じたドーナル・グリーソンは、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」においても散々な目にあう悪役を演じていました。
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

だからなのか、今作でも悲惨な目に遭います。

  • 相続した家宅を野生動物に荒らされる
  • 恋仲の女性とのデートを邪魔される
  • 起きたら突然トラバサミを咬ませられる
  • 罠を害獣対策に設けた電気柵を逆に利用されて電気ショックを受ける
  • アレルギーのブラックベリーを口に放り込まれて痙攣

泣きっ面に蜂ということわざの例としてこれほど適当な人物はほかにいないのではないでしょうか。

家を荒らされたり、デートに横やりを入れられるのはまだ許せる。電気ショックも先にやったのはマクレガーだから仕方ない。

でも、アレルギーの食べ物を無理やり食わされるのはいくらなんでもやりすぎだろうと思ってしまいました。もうそこで、作品への集中が完全に途切れました。

そもそも、マクレガーがピーターラビット達に襲撃されている発端も理不尽です。もともとそこに住んでいた、会ったこともない伯父の家を相続したこと、そこにある庭を守ろうとしたこと、など常識的な行動にしか及んでいませんよね。そこに何ひとつも害意はありません。ピーターが庭に忍び込もうとしなければ、特段何もしなかったでしょう。

それなのに、まるで悪役かのような扱いで攻撃され続ける彼の姿を面白いという気にはなれませんでした。

ロンドンの大手玩具屋ハロッズではたしかに極端なまでに厳格な仕事人であり、他人を見下しがちな性格が窺えたものの、不義理な行いにまで及んではいません。自分よりも職能の低い人間が出世することに対して怒りを覚えることも当然でしょう。怒りを周囲に当たり散らしてしまったことは彼の非ではありますが、非難されるべき悪人からは程遠いです。

都会の出世競争からはみだして自分の居場所を失ってしまい、それでも自分の夢を叶えるために伯父の家を資本にしようとしました。客に適切な玩具を勧めてあげたいという夢からも人の好さが見えます。このようにトーマスは観客が共感できるキャラクターの素質を持っているのです。

見ている間、自分が共感するキャラクターが虐められる映像には、不快な気持ちを抱いてしまいました。

最後に家を買い取った夫妻を電気ショックで撃退するのも、ドン引きでした。

善良な心を持った人が酷い目に遭わされる。そんな展開を世界的人気の児童書を基にした映画で観たいと思うでしょうか?

 

反省しているようで全然していない元凶ピーターラビット

打算的に立場を利用してマクレガーを攻撃するピーターラビットには本気で腹が立ちます
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

マクレガーを痛みつける数々の行いを通じて、ピーターラビットというキャラクターの印象すら悪くなってしまいました。

相手の弱み(ビア)につけ込み、アレルギーのブラックベリーを嬉々としてマクレガーの口に放り込むシーンには特に嫌悪感を覚えます。アレルギーは、現実では微量でも死に至るケースもあるぐらいデリケートな生理現象です。それを悪ふざけのようにやってのけるというのは全く受け入れられません。前述したように、マクレガーが根っからの悪人ではないこともその不快さを押し上げています。

そもそもの話、マクレガーと壮絶な戦いを繰り広げている発端はピーターなんですよ。

いくら土地を追われ、父親を殺されたと言っても、実行犯は大叔父のマクレガーであってトーマスではありません。ビアを奪われたように語られようが、人間同士で恋愛することは当たり前です。

もともと事情がもつれていながら、暴力的な行為に訴えかけるばかりのピーターが更に話をこじらせ、マクレガー
との闘争になってしまっているのが本作のプロットなのです。

これでは相手を攻撃するよりも先に、話し合えば?と思ってします。挙句、爆破を引き起こしてしまった時でさえ、理解者のビアとは言葉を交わさないという有体です。

ロンドンへ足を運んでマクレガーを説得しにきた時にまで、自身の悪戯を軽々しく口にするあたり、反省の弁の腰を自ら負ったのもマイナス。

トラブルを呼んでいる原因がピーターであり、ピーターが生じた表層的なトラブルを解決するだけで映画が終わってしまったので、いくらハッピーエンドになろうがまるで喜べませんでした。自分には放火犯が消火活動する様子を映した映画という喩えがやたらとしっくりきます。

原作のピーターラビットはどうなのかは知りませんが、残念ながら映画での彼は自分には合わない主人公でした。

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最後まで頭が悪くて都合の良い存在でしかないビア

話が少しずれてしまいますが、自分は昨夏観た「ベイビー・ドライバー」がものすごく面白かったと記憶しています。

ベイビー・ドライバー(初回生産限定) [Blu-ray]
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ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2018-01-24


簡単なあらましを言うと、銀行強盗などを現場から逃走させる裏稼業を営む青年が、恋人のために足を洗おうとするクライムアクションものです。

リリー・ジェームズ(「シンデレラ」のシンデレラ役)演じるその恋人というのが、描写的にはけっこう薄味なんですね。
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(C)2017 Sony Pictures Digital Productions Inc.All rights reserved.(C)2017 TRISTAR PICTURES,INC ALL RIGHTS RESERVED.

ただ、これは彼女が主人公のベイビーが更生するための動機(=マクガフィン)でしかないからという明確な意図があるようです。

実際彼女とのラブロマンスは必要最低限に留められ、本筋である軽妙な駆け引き・アクションに注力されているおかげで、高いエンタメ性を確保できています。恋愛はあくまで、主人公を動かす装置なのです。

そして、ピーターラビットにおけるビアも本来はその役割を担っているのだと推測できます。実際、マクレガーとピーターの間にある確執というものは、庭だけではなくビアの存在も非常に大きいです。そして、両陣営を争わせるマクガフィンとして、一先ず役割は果たせていたとは思います。

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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

しかし、自分はビアという人物に愛着を持てませんでした。そこが大きな問題です。

「ベイビー・ドライバー」のヒロイン デボラは、自身の名前と絡めて音楽好きのベイビーと接近する過程が簡素ながらも説得力あるよう描かれ、「ピンチに陥った彼女を救わねば」という導線をうまく引いていました。

一方で、ビアはマクレガーとピーターにとってたしかに重要な存在ではあるのでしょうが、観客である自分は全く彼女に魅力を感じられなかったんですよ。

原因を大きく2つに分けて説明します。

1つ目にマクレガーと彼女が接近していく過程に面白味も説得力もないという点が挙げられます。これは、ベイビーとデボラが音楽で結ばれたのに相当する、共通項が見当たらないことが大きいです。田舎に越してきたマクレガーをビアが異性として意識し始めるきっかけが極めて作業的に流されてしまっており、「なぜ彼女(彼)なのか?」と思ってしまいました。

「人を好きになるのに理由は要らない」。

そんな声が聞こえてきそうですが、物語である以上、恋愛が結実する過程は少なからず説得力が欲しいです。今作のように恋人がマクガフィンであるのなら、猶更その重要性を訴えかけるのは必須でしょう。

これはマクレガー側のみならず、ピーターの側にも言える事です。ピーターとビアの関係性を示すために絵が用いられていました。一見彼らの繋がりの強さを表しているように思えますが、実際に互いに理解し合っているのかと言われると首をかしげたくなってしまいます。

ピーター達は言葉を話せるのにビアと喋ってはいないし、ビアもまたピーターの本性を知らないのですから。

ビアに魅力を感じられなかった原因の2つ目が、最も本作で失望した部分です。

自分は最後まで、彼女から知性を感じることができませんでした。

マクガフィンであると言った通り、彼女は今作において大きな影響力を持つ人物です。彼女の一声でマクレガーとピーターの抗争は激化するか、あるいは止みます。彼女が事実を知り、マクレガーとピーター両名と和解することで物語はハッピーエンドとなったのです。

それだけに、事態の意味を理解しようともしない姿勢にはげんなりしました。それどころか引っ掻き回すような言動をとっていたのは本気で理解に苦しみます。

明らかに様子のおかしいマクレガーに対して疑念を抱くこともしなければ、ピーター達の衣類を指摘してもその違和感は都合よくスルーしてしまう。まさに、脚本に動かされているような存在です。

無知・無自覚なだけならまだしも、自分の頭で考えているようにも思えないのも致命的でした。不自然な爆破が起こって、自分の家が崩壊したというのは確かにショッキングだったかもしれませんが、それまで良好な関係を築いていたマクレガーが何故そんな行動に至ったのかについて考えることぐらいしてもいいでしょう。それすらなく、いきなり拒絶を始め、ピーターに疑いの目すらかけない。コメディ作品であることを差し置いても、あまりに愚かな人物だと思いました。

今回はたまたまピーターとマクレガーが和解し解決したからいいものの、彼女の根っこが変わらな
い限りまだトラブルは続く危険性は残っているでしょう。そういった点で、きわめて後味の悪い話にもなってしまいます。

ビアはピーターラビットの原作者ビアトリクス・ポターをモデルにした女性らしいですが、死人に口なしの状況下でこんな人物にされてしまっては、不憫でなりません。

 

既視感だらけの映像表現

本作を見てホームコメディの名作「ホーム・アローン」を思い出した方もいるかと思います。


単調直入に結論を書くと、自分にとって今作は創意工夫のない「ホーム・アローン」です
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© 2018 SONY PICTURES ENTERTAINMENT (JAPAN) INC. ALL RIGHTS RESERVED.

電気柵、穴塞ぎ、マクレガーが侵入者のピーターを追い出すギミックが全体的に地味。最終的にエスカレートして爆弾を使うようにはなりますが、もっと激しい他の映画でいくらでも観てきたので評価点にはなりません。

ピーターラビット陣営の悪戯もなんだか既視感に溢れています。唾を耳につけるとか、にんじんを車のマフラーに詰まらせるとか、作り手はこれを少しでも面白いと思ってやっているのだろうか…と思いながら鑑賞していました。

ピッチフォーク(藁を扱うための農具)を踏ませて顔に直撃するなんて、ディズニー映画あたりのコミカル描写で散々目にしていたので、驚きも何もないです。リズミカルに踏ませる程度の工夫では物足らなさを覚えます。

戦闘面でインフレし、火薬やトマトを派手に投げ合うシーンも終始退屈でした。所詮、庭先で起こっている出来事なので爆発の規模感はさほどでもないし、子供向けの枠を飛び越えることもせず、両者ともにたいした負傷もしません。

決め絵のように挿入されたスローのピーターとマクレガーのジャンプ投げにしても、古今東西ありふれた演出です。人間がナイフや爆弾を投げる代わりに、片一方をうさぎとトマトに置き換えただけなのですから当然でしょう。

ひとつだけ目を見張ったのが、ハリネズミのティギーおばさんが電気柵に触れたシーンです。ハリネズミという動物を活かしたリアクション芸が展開され、大量の針がこちらに向かって飛んでくるという映像はなかなか迫力もありました。

とはいえ、基本的には出てくるギミックやアクションのどれも既視感だらけで工夫がないと感じました。今まで数多試みられてきた物を、うさぎに置き換えれば斬新だろうと思ったのでしょうが、カバーしきれるような魅力はなかったというのが個人的な感想です。

 

まとめ

今作はピーターラビットという人気キャラクターを用いて、新たな挑戦をしたくて作られたのでしょうか?

それにしても見たことがあるような画が散見され、倫理的に容認しがたい描写も多数。果ては作者への侮辱ととられても仕方のないキャラクターまで出てきて、原作を読んだことがない自分から見ても原作へのリスペクトが窺えない作りでした。

近年は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「ブレードランナー2049」など、人気ブランドを掘り起こし、高い評価を得ている映画作品も目立っている中、人気キャラに寄りかかるだけではやはり物足りなさを感じてしまいます。

興行収入面では一先ず成功を収めて続編も決まっているようですが、端的に言って工夫がないと先細りするだけではないかと思います。

ここまで批判を多く挙げてしまいました。自分は低評価になってしまいましたが、作品の構造が破綻しているとか、低クオリティといったことは全然ありません。自分の評価は好みによる所が大きいですし、Twitterなどではピーターラビットのイメージを覆されたことに驚く声もあります。

あくまで個人的な感想として今回は締めくくらせていただきます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

ピーターラビット (角川つばさ文庫)
フレデリック・ウォーン
KADOKAWA
2018-05-15

 

アニー(字幕版)
ジェイミー・フォックス
2015-04-22

 

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