こんにちは、広瀬すずか広瀬アリスかと問われたら迷わずアリスと答えるワタリ(@wataridley)です。
今回は同名の少女漫画を実写化した映画「センセイ君主」をレビューします。
原作については未読の状態での鑑賞。
そのドラッギーな予告編に関心を寄せ、浜辺美波に期待して劇場へ足を運びました。
今回のレビューは、とりわけ病的なまでに竹内涼真=弘光先生の魅力に肉薄する内容になっていますので、ドン引きしたくない方はブラウザバックすることをオススメします。
ネタバレに触れておりますので、未見の方はご注意くださいませ。
64/100
目次
知性的で抑えたオーラの中にエロスを包んだ竹内涼真
佐丸あゆはことさまるんが恋する弘光由貴は、授業はビジネスライクに行い、時折君主のようなきつい物言いもしてしまうひとまわり年上の数学教師。
竹内涼真が演じている彼は、数学を教える身とあってシャツに身を包み、眼鏡をかけ、落ち着いた髪色をしています。
社会人としては真っ当な装いながらも、このシャツからチラ見する上質な肉体と、定まった表情が後半になるにつれて変化を見せていく様にはときめかされました。
今作の魅力は、コメディエンヌを演じた浜辺美波と竹内涼真が醸し出すエロティシズムに拠るところが大きいです。
(C)2018 「センセイ君主」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社
静的なルックスがセクシー
生徒が勉強するもしないも自己責任だと告げるほどに冷めたスタンスを取る弘光先生は、その性格の通りに表情に感情がこもることは少ない。
この一定に保たれた表情で、半ば強引に促され“さまるん”と呼ぶシュールさがなんとも微笑ましい。そして、これっきりではなくその後もしっかりさまるん呼び。もはや浜辺美波と自分を重ね合わせ、あの鉄面皮な数学教師からニックネーム呼びされるシチュエーションに心拍数は上がるばかりでした。
しかし、彼とて人間。感情がないわけではありません。
そう、武田鉄矢のモノマネには幼くさわやかな笑みをこぼしてしまうのです。
武田鉄矢だけが笑いのツボなんて素敵!
武田鉄矢にだけ特別な顔を見せるというのが実にセクシーでドキッとしますね。僕も映画を見た拍子に練習しようと思いました。こん、ばかちんが!
また、光をまといし御顔もロマンチックの極み。
白やオレンジ色の光をその身に当て、真剣な眼差しと優美なる顔立ちがいっそう魅力を増していました。数学準備室に差し込んでくる光だとか、廊下の窓から当たる黄昏が実によく似あう男です。
光を充てたい芸能人というランキングで彼の右に出るものはいないでしょう。おそらく。
極上の肉体がセクシー
先生という立場上、フォーマルな格好をしているが、ちらりと露出する腕筋や首筋の隆起がセクシー。セクシーどころではなくホットといっても過言ではない。
予告編でもおもむろに客を釣るために、ジャージを脱いだ拍子に鎖骨がちらりと見えるエロティックなカットが披露されていました。実際、大スクリーンで見せる長身で程よくがっしりした成人男性の鎖骨が映り込むと、その空間が情欲掻き立てる匂いであふれかえるような錯覚さえありました。
部屋にあるものをあまり触るなと実質的なバックハグをするシーンなんか、あの極上の肉体に体を重ねられているわけですよ。何事にも替えがたい至福に違いありません。
フォーマルなシャツ姿から、短く清潔に髪が切りそろえられたうなじや、腕まくりをしてお披露目される腕筋のほどよい太さに逞しいシルエットは、万人を引き込む魅力に満ち溢れており、筆者も誘惑には抗えなかった次第です。
比較的小柄な浜辺美波と並ぶと、そのすらっとした佇まいが一層強調されており、まだ幼き高校生の彼女と、ある程度成熟した彼との対比が見て取れるのも胸キュンものでありました。
(C)2018 「センセイ君主」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社
冷静で知性的な声がセクシー
表情もそうでしたが、声も基本的に淡々としているわけですよ。
そんな声で話す内容がいちいちこちらの心臓を鷲掴んでくるから、弘光先生の魅力は顔、肉体だけではなく声帯にもあります。
声とは所詮は声帯から発される程度の音ですが、司るのが人間である以上そこには心情や人柄が滲み出るってものです。
さまるんに対して言葉を投げかける際にはフラットな口調ではあるものの、きちんと彼女を慮った上で発されていることが伝わってきます。授業中にしゃべっている時と、さまるんにしゃべる時とで確実に違いが見て取れます。
彼氏がいないことを嘆き、四苦八苦するさまるんに対しては「漫然と生きるのをやめたら?」と一見手厳しい指導を行なっています。
しかし、きちんと言い方に呆れだとか、心配といったものを感じさせる感情的な色合いが現れています。この時点では、さまるんのことなど恋愛対象としてはアウトオブ眼中に違いなかったと思うのですが、放って置けない彼の人間味は隠しきれてはいません。
その後も着実に、淡々としていながらも端々で変化していく様子が竹内涼真の低めに保たれた聴き心地の良い声で表現されているのに感心
自分が特に好きなシーンは、放課後に数学準備室にさまるんを呼び出したところです。
さまるんのことをなんだかんだ気にかけ、発した言葉がこちらのときめきを煽りに煽りました。
「相談に乗ってあげる」「ほら早く」と急かされると、そういうニュアンスではないとわかっていながらも、まるで誘惑されているようないやらしさを捏造し、体が熱を帯びてしまいます。
「俺のこと好きなの?」
と言うシーンも同じ屋根の下、暗めの部屋の中、足を組んだ彼が後ろの方から尋ねてきたらとんでもなくドキドキしますよ。
声という目に見えない表現媒体でここまで想像力を掻き立てる竹内涼真は実に恐ろしい存在です。
君主のように厳しくも、紳士のように優しいギャップがセクシー
さまるんが初めてデートした後、振られたのか振ったのかもようわからんぐらい突き飛ばされ噴水に体勢を崩したさまるん。
そんな乙女に弘光先生が手を差し出すシーンは、逆光の眩しさも相まって神々しさまで感じました。ジェントルマンたる付かず離れずな優しさを発揮し、スクリーンに手を伸ばしたくなるほどの頼もしさもありました。
雨が降った日、春日のここ空いてますよゾーンにさまるんを入れて、密着しながら走行するシーンなんて、パーソナルな空間に彼女が入ることを許しています。弘光なりに残らせてしまったから、責任を持って濡らさない配慮をしていることが読み取れます。
君主的な厳しさを思わせる一方、きちんと責任感もあり、優しい気遣いをすることが彼の魅力に映りました。
かつて夢を追うことを断念し、数学教師として勤めている弘光にとって、ないふり構わず邁進しようとするさまるんはきっとかつての自分と重ねる部分もあったのでしょう。全くの他人事として済ませられない彼なりの配慮というものが「漫然と生きるのをやめたら?」というセリフとして現れています。
生徒が勉強するもしないも自己責任だという一種突き放した態度も、期待しすぎなければ傷つくこともないという自己防衛意識によるものかもしれません。
ただ、さまるんにだけはその自己防衛を徹底することができず、どんどん彼女のことを意識せざるをえなくなっていくわけです。
ここに彼の人間的な弱さと優しさがあって、数学教師として容赦ない面を見せつつも、最終的にさまるんのひたむきさを否定することまではしていません。「俺のこと落とせるものなら落としてみなよ」という強気な発言は、挑戦状であると同時にさまるんの土俵に乗っかってあげている意味も持っています。
よくできましたスタンプの代わりに頭をぽんぽんしてあげるあたりも律儀です。
厳しい性格の彼がさまるんに影響され、彼女に対して丸みを帯びていく様子には心温かくさせられましたし、弘光先生のストイックさとジェントリーさの双方を観客にアピールしていました。
何が言いたいかというと、竹内涼真最高ということですね。
コメディエンヌ浜辺美波、覚醒
徹頭徹尾静かな振る舞いをしていた竹内涼真に比べ、浜辺美波は終始賑やかな表情とセリフ回しを行っており、対照が際立っていました。
(C)2018 「センセイ君主」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社
浜辺美波と言えば、今作の監督である月川翔の「君の膵臓をたべたい」と「となりの怪物くん」に出演しています。こちらでは、彼女の持つ無垢なタレントイメージに則った役回りを演じており、良くも悪くも自分の畑で仕事をしていたように思います。
一転、今作「センセイ君主」では彼氏いない歴=年齢といった無垢な設定を与えられつつも、そのことに全力で悩み、七転び八起きするダルマのような乱を感じさせる役になっています。浜辺美波を追ってきた人にとって、この急激な変化は刺激的でしょう。
作中では恋することで受ける苦しみと喜びを、シリアスになりすぎずギャグで済ませる前半部分と、心が揺れ動く様を真剣に表現していた後半部分とで、大きな違いを見せつけてくれます。これには、自分も驚かされました。ダイナミックな芝居に足を踏み入れたことで、彼女の活動領域は間違いなく拡張したにちがいありません。
映画の初っ端では、もろに「ストロボ・エッジ」のパロディネタをぶっこんできており、そのこと自体にも笑いましたが、清廉なイメージを一気にぶち壊す振られっぷりにも目を見張りました。
その後も牛丼ドカ食いや溌剌とした話し方で次々と既存のイメージ像を蔑ろに(誉め言葉)していましたし、博光先生と接するときのテンパり具合がチャーミングでした。それにしても彼女、元気に笑うと目元がまりもっこりにそっくりですね。
早口や奇抜な言い回しも聞き心地がよく、単にルックスだけが売りの女優ではなく、しっかりと実力を発揮されていることも感服しました。予告編にもあった、デートのシミュレーションの活き活きとした感じなど、嘘っぽさを一切感じさせないリアリティと痛々しさがありました。
「勝手にふるえてろ」の松岡茉優にも比肩しうる独自性があったと思います。
漫然とした恋から相手想いの恋へのシフト
自分が思うに、今作の中核的なテーマは弘光が語っていた「漫然と生きることからの脱却」です。
さまるんにとっての恋愛と弘光にとっての数学が、具体的な例として語られていました。
さまるんは高校に入ったら彼氏が自然とできるものだという一種の恋愛幻想を抱いていました。告白しては振られ、また告白しては振られるを繰り返し、とうとう桜木花道と比較できるほどに連敗。
そんな折に、かつて同じクラスだった男子に告白されて、浮かれあがってしまいます。噴水前での告白時、一切相手の顔が映らなかったのは、彼女の関心の矛先がそこにはないことを物語っているようです。
結局、相手の良くないところばかりを見留てしまい、呆気なく破局。恋をする行為は、確かに第一印象によるところも大きいといいます。
しかし、さまるんのここでの過ちは相手をまるで見ずに恋愛という状態に陥ろうとしたことです。「恋する自分に恋をしている」という批判は言いえて妙で、恋愛は1人でするものではなく相手と2人で歩み寄ってはじめて成立するもの。
そんな調子で、容姿の優れた弘光に歩み寄ろうとするも、つれない態度を取られる始末。一時は近づかないようにしましたが、雨の日のラッキーが重なり、接近。その時の弾みで弘光へ猛アタックを仕掛けると決めました。
豊胸アタック作戦が失敗に終わった後に、幼馴染の虎竹に教えてもらった「相手を喜ばす」という行為にシフトし、これがさまるんの恋愛を好転させることになります。
さまるん自身、ここまでは恋愛について地に足つかない状態でした。両想いを「奇跡」と形容する彼女にとって、恋愛は無作為や運といったものが絡む不安定な要素で、そこには受動的な考え方が存在していたことでしょう。
それに比べて、虎竹にアドバイスされた相手を慮る恋愛は、まずは自分から貢献しようという積極性に因んでいます。これが、さまるんにとって、漫然ではないはっきりした恋愛に繋がり、弘光の心を動かしました。
つまり、白馬の王子様が迎えに来てくれるといった恋愛幻想をセンセイ君主の弘光が打ち砕き、さまるんが自分よりもまずは相手を喜ばす実践的な恋愛にシフトしていく、というのが今作の核でありテーマです。
非常にストレートではあるのですが、恋する女子が痛々しく転げ回る様をコメディタッチで描き、弘光とさまるんの静と動の緩急ある魅力で引き付けるところにこの映画を物珍しいものにしていると思いました。
味付けが奇抜なだけで、根っこは単純
ここまで今作の面白みについて語ってきましたが、反面退屈さを感じてしまう部分もありましたので、それについて書きます。
今作には、キャラクターが自分の状況や心情を喋りすぎるというよその映画でもよくある弱点がとにかく目立っていました。
さまるんや弘光のキャラクターがはっきりと相手に物言うため仕方ないと思う一方で、後半のシリアスパートではそれが却って想像の余地を削いでしまう場面もありました。
学園祭の出し物での合唱シーンのように、言外で語る表現がもっと欲しかったというのが正直な感想です。
前半部分では抑えきれなくなった気持ち=ハートが破裂し雨のように降り注いだり、目にハートを浮かべるといった漫画チックな演出など見どころではありました。
それを使えなくなったラスト付近では、ラブノートなるものに描かれた心情でナレーションを入れる、対面で自分の思いを伝えるといった手法が目立っていました。予告編にあったような奇抜さは後半では脱臭され、素朴になっていったわけですが、ここで映画としての単純さが隠し切れなくなったとは感じました。
浜辺美波のはっちゃけっぷりや竹内涼真のエロスといったものでうまく見どころを作っていますが、言い換えると役者に寄りかかっている比重も大きいと言えるでしょう。
元が少女漫画ということで、心情を述べるモノローグも多かったとは思います。その中で、映画にうまく合わせた改変を行えていたら、尚よかったと思います。
川栄李奈演じる親友もあくまで隅で賑やかす程度の存在で、もうちょっと物語の根幹に絡んでくれると個人的には嬉しかったです。
ちなみに川栄李奈のボンババボンは最高にパワーを感じるセリフでした。
(C)2018 「センセイ君主」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社
まとめ
今作をひとことでまとめるならば、「相手を思いやる恋愛でまずは自分から踏み出すべしといった実直なテーマを掲げ、そこに浜辺美波と竹内涼真という二輪の華美な花を添えた作品」といったところでしょうか。
キャストが魅力的。言い換えるとキャストありきな作りだと思いますし、よくある実写化の弱点をそのまま抱えてしまっていることは惜しかったです。
ただ、それにしてもキャストの表現力には目を肥やされました。
竹内涼真をこれ以上にエロティックに映した映画作品はこれからお目にかかれるのだろうかと心配です。
浜辺美波の殻を破る姿も活写されており、今後も両名には期待していきたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
ボンババボン!
アイキャッチ画像: (C)2018 「センセイ君主」製作委員会 (C)幸田もも子/集英社