みんな、シヴァガミになる『バーフバリ 王の凱旋 完全版 IMAX』感想

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こんにちは、好きな体型は逆三角形のワタリ(@wataridley)です。

今回は、1週間限定公開の『バーフバリ 王の凱旋 完全版 IMAX2D』を体験してきた感想を記します。

 

前語り: 願いが叶いすぎた

『バーフバリ』は前編『伝説誕生』が2017年春に公開。そして後編にして完結編『王の凱旋』が2017年末に公開され、日本で公開されたインド映画としては大ヒットを記録。日本国内では前後編合わせて高い評価を得、2018年2月には『王の凱旋』のソフトが発売。

ふつうならソフトが発売されてしまえば、あとは家で楽しむものとなり人気も落ち着くもの。

しかし、バーフバリはそんなタマじゃなかった。

一部映画館でしかやってないインド映画にもかかわらず、驚異的ロングランを達成。続々と各地で開催される応援上映に代表されるよう熱は留まることを知らず、まさかの漫画企画が起こり、劇中歌はカラオケにまで相成った。創造神ラージャマウリ監督やクマラ・ヴァルマ役のスッバラージュ氏による来日も行われ、ありとあらゆる祈りが結願した。

極めつけは、海外向けに編集されたバージョンとはまた別に存在していた「オリジナル・テルグ語版」が「完全版」として公開にこぎつけ、バーフバリファンは歓喜に包まれた。

ラージャマウリ監督も日本のバーフバリブームを目の当たりにして、バーフバリの原点『マガディーラ 勇者転生』を新たに編集して日本に送り出してくれた。

更に10/26(金)からは『伝説誕生 完全版』の公開も控え、前後編のオリジナルサウンドトラックも発売される。

 

バーフバリとIMAXはバーフバリとデーヴァセーナの関係に等しい

そこへきて、今回のIMAX版上映決定は、予想だにしない方角から急に大砲が着弾したような衝撃があった。

IMAXはその特殊な設備から、今まで国内で公開されたものは大抵新たに公開される話題の大作だった。なので、いくらインド本国でIMAX形態の上映実績があろうと、公開から暫くが経ったインド映画を日本のIMAXで上映されるビジョンは浮かばなかったのである。そんな指をくわえるしかない日本在住マヒシュマティ国民の口元に、配給会社ツインがIMAX上映を運んできてくれたのは僥倖というほかない。

一度はバーフバリを観たことのあるファンならば、バーフバリ×IMAXの組み合わせは実物を見るまでもなく相性抜群とわかるはずだ。

『バーフバリ』の物語は、『伝説誕生』の初っぱなからどデカイ滝に向かってシヴァガミが逞しく叫び、赤ん坊を命に代えて助けるという神々しいシーンから幕開けるほどに、そのスケール感は飛び抜けている。とにかく、画面を通して伝えられる情報の何もかもがデカイのだ。また、IMAXの画面もデカイのだ。デカイのとデカイのを掛け合わせれば、そこにはもう度を過ぎてデカイ体験があるに違いない。

実際に観た結果、そうした想像は見事に現実となった。いやはや、IMAXスクリーンに映るバーフバリはちっぽけな自分には受け取れきれぬほどのスペクタクルが詰まっていた。バーフバリとIMAXの組み合わせは、バーフバリとデーヴァセーナの関係に等しい。

以下に魅力を書き出していく。

 

音がデカい

IMAXと言えばスクリーンばかりが注目されがちだが、立体的でクリアな音響も見所(聞き所)のひとつである。

通常の上映形態とはランク違いの音響設備が、ミュージカル要素を備えたバーフバリの魅力を増幅させていた。

石像で表された『伝説誕生』のあらすじとともに最初にかかる音楽「Oka Praanam」からして、包み込んでくるような大音量が流れ、映画への没入感を高めてくる。

続く像大暴れのオープニングシークエンスにも脈動が高鳴った。いきなり像が暴れ出し、驚き慌てる群衆の叫びが実に喧しく響いてくることによって、その場の混乱が画面を隔てているだけであたかもそこにあるかのようであった。そして救世主の登場。山車が像に接触する轟音が実にド派手なものだから、この時点で音による興奮が笑いを生んで、自分は口角と頬肉が上がってしまった。

そのすぐ後にかかる音楽の楽しさもランクアップしていた。バリバリバリバーフバリ!から始まるコーラスのハリの良い音もさることながら、響き渡る太鼓の音が劇場内にバイブレーションを引き起こし、その振動が座席を通じて、自分の身体に伝わってきた。広大無辺なカリスマ性を持つバーフバリを称えるその曲と自分がたしかに一体化しているような感覚を得ていたのだ。

どデカい音響にふさわしい派手なシーンがふんだんに詰め込まれているため、こうした興奮が見せ場の度にやってくる。

一方で音響効果は単に激しさを引き立てるのに偏っているというわけでもない。自分がIMAXで思いの外に魅力を引き立てられていると感じたのが、「かわいいクリシュナ神よ」の華と「白鳥の船に乗って」の情緒である。「かわいいクリシュナ神よ」のコーラスの高くよく通る声は、IMAXの大音量を通じて聞き応えが増幅している一方で、その上品さはまるで損なわれていない。「白鳥の船に乗って」でもそうした歌の魅力は同様である。大波に襲われた船が飛び出していくという驚きに満ちた場面も、飛び立つ際の音の迫力によって開放感も一層大きい。

また、音の演出が過剰である『バーフバリ』では戦闘シーンでやたらと金属音、動作音、斬撃音が鳴る。これは通常の上映形態でも、観客がアクション描写を受け取りやすくなる効果があり、大仰な音が戦闘の爽快感を生んでもいた。当然IMAX上映では、その爽快感が更に高まっていた。金属同士がぶつかり合う音は耳をつんざくといっても過言ではないほどに大ボリュームであり、終盤の「ヤシの木突撃」では、異常に激しい城壁の上でのぶつかり合いが身に染みて伝わってきた。矢の射出装置が破壊されるたびに、木々がこすれる音を交えた轟音が腹に響く様は圧巻だ。

このように音の量と質が高まった結果、これでもかと感情を煽り立てるバーフバリの音響効果それ自体がアトラクションと化し、音に興奮する瞬間が幾多も訪れていた。筆者は爆音上映を見逃してしまったのだが、IMAX版で溜飲を下げてもらった次第である。

 

画面がデカい

『バーフバリ』のIMAX版は惜しみなく全編フルスクリーンで展開される。

筆者が今夏観た『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のIMAX版でもフルに表示されるのはトムが体を張っているアクションシーンに限られていた記憶がある。同作には室内で静的な会話をするといった場面もあり、それらはわざわざIMAX表示にする必要がない。

だが、バーフバリでは全編に渡って画面いっぱいに映される。そして、すべてのシーンにそのIMAX規模にふさわしい映像的迫力が宿っていた。

バーフバリの世界はすべてが大スケールだ。主たる登場人物の肉体は揃いも揃って逞しく、武器を手に取る場面ではありえないほど跳躍する。単に言葉を交わすだけの場面であってもやたらめったら風通しの良い場所で物を語る上、室内シーンでも豪華絢爛な装飾や彫刻が施されている。

主演プラバースの存在感を軸に、さまざまな登場人物達が彼と異なった個性をIMAXに映し出していく様は、見ていて面白い。

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カッタッパのボリューミーなお髭は大画面に映ると、改めて面白いと感じる。更には、乱れ毛も目に止まる。彼の顔に刻まれたシワや傷跡なども、大画面だからこそ目につくようになり、味わいを増していた。

ビッジャラデーヴァの醜悪な顔やシヴァガミのストロングな目力も襲いかかってくるようだった。特にシヴァガミの目はIMAXに映ると間違いなく観客の身体よりも大きく表示されるわけで、これがとんでもないインパクトを与えているのである。画面が切り替わってもしばらくシヴァガミの瞳が頭に残り続けることは必至だ。本来人間の顔のアップなどIMAX上映においては小休止的な、非常に枝葉末節的な絵であるはずなのに、ラムヤ・クリシュナの目は、それが見せ所として成立していたように思う。

自分が上映中見つけた思わぬ魅力は、化粧品のCMを思わせるほど肌が綺麗なデーヴァセーナことアヌシュカ・シェッティである。彼女もシヴァガミと同様気の強い気性を顔に表す一方、アマレンドラに恋する可憐な表情、バラーラデーヴァに虐げられ枯れきった顔など、変化が激しい役所となっている。若い頃の彼女は、IMAXスクリーンを通じてその美貌を見事に印象付けてきた。画面に顔が映っても綻びはまるで感じさせない、卵のような肌質に驚かされる。瞳や鼻筋といったパーツの整い具合も、まさしく「美の女神も恥じ入る美しさ」と納得できるほどだ。

だが、そうした個性抜群なキャラクターをサポーティングロールとし、中央に堂々と立つのが主演プラバースだ。なんだかんだいって彼の整ったヒゲ、獅子のような髪の毛、そしてモリモリの肉体に見惚れてしまう。

大画面が映し出す魅力はもちろん人間のみならず、その広大な世界風景にもある。前半部分、クンタラ王国宮殿に訪れる場面の緑緑しく広い自然美に、その後の数々の見せ場に向けての期待感を煽られる。

クンタラ王国のシークエンスではややスペクタクル要素が欠けていて、おとなし目のコメディ描写が多いのだが、そうした問題点も上記に挙げた登場人物達のビジュアル的魅力で気にならない。

クンタラ編のクライマックスにあたるピンダリの大群は、大画面に容赦なく映されていた。正直言って自分の視覚では捉えきれないほどの情報量である。数千人使っているのかと思うぐらいの人の粒が画面に映り込む様はそれだけだもびっくりするのだが、そこへトドメを刺すかのようにやってくるのが燃え盛る牛だ。大量の炎の光でIMAXの劇場が明るくなると、やはり臨場感を強く覚える。このシーンラストに起こる大洪水に至っては、画面内の迫力と画面の大きさが見事にリンクしており、もしや画面が突き破れて水がこっちまで漏れだすのではないかという不安が生じるレベルであった。

大画面表示による恩恵は、ほぼ全てのシーンにあるといっても過言ではない。前述したように、今作のロケーションはどこも広い。クンタラの宮殿内、白鳥の船、法廷を兼ねた王宮内、戴冠式が行われた広場、王国の城壁前の荒野など、どれも窮屈とは無縁である。

白鳥の船が飛び上がる荒唐無稽な光景や最後の決戦の激しい戦闘などの迫力が異常なまでにヒートアップしている一方で、宮殿内の会話シーンの厳かな空気感がたしかに再現されてもいる。デーヴァセーナがマヒシュマティに初めて訪れた際の、兵士たちが扉を開けるカットでは、その扉は実寸大のように感じられた。その奥に広がる空間も歩いて行けそうだと思ってしまった。戴冠式の群衆にしても、本当にそこに集まっているような感覚があった。冒頭とこの戴冠式に出てくる象は、もはや実寸大以上となっていたが、これもまた見応えがあった。

このように、冒頭の暴れ象やピンダリ襲撃、最後の王国奪還といった明確な「見せ場」ではないシーンであっても、目が離せない景色が出来上がっていた。通常上映ではなんとなくで見てしまっていた場面に迫力や臨場感が付与されていたため、IMAX上映はある意味また別の『バーフバリ』と言えるだろう。

 

今まで公開されたバージョンとの違い

映画の最初にインドにおける配給会社の表示があった。これは今まで日本国内で公開されたバージョンにはないものである。これと同様、本編内にも細かな違いがいくつかあったので振り返ってみよう。

 

戴冠式の終わり

従来のバージョンだと、戴冠式終わりのシーンではかなり音が不自然に切れて次のシーンへ移行していた。これは、今回のIMAX版で「INTERMISSION」が表示されており、それを切り取ったことによって生じたものだと判明した。

 

クマラ・ヴァルマの最期が映る

ビッジャラデーバに誅殺されてしまったクマラ・ヴァルマの最期は、これまでは斬り付けられるところは映っていなかったが、今回のバージョンでは斬られるところまで映ってから、宮殿の外景のカットへ映るようになっており微妙な違いがある。クマラ好きには辛い。

 

バラーラデーヴァ戦車のカット

IMAX版にはクライマックスに登場するバラーラデーヴァの戦車のシーンで、日本で公開された完全版との些細な違いがある。完全版では登場するや否や容赦なく3人を撥ね、その後車両前方から矢を射出するという流れであった。国際版にはこの間に次々と敵味方関係なく撥ねていく様子を横から映したカットが存在していた。今回のIMAX版はそのカットが含まれており、完全版に国際版カットを加えたものになっている。

ちなみに国際版限定のシーンは他にも「カッタッパを抱えて崖から背面ダイブするバーフバリ」があるが、それはIMAX版には収められていない。

 

鎧を剥がした際のBGM

マヘンドラとバラーラデーヴァの肉弾戦中、鎧を剥がし本領発揮という熱いシーンで流れるBGMがこれまでと異なり、「ティキティキドーン!(筆者の耳にはこう聞こえた)」というシャウトコーラスがない。

 

『伝説誕生』のデーヴァセーナの語り

バラーラデーヴァを生きたまま焼き殺したデーヴァセーナは、『伝説誕生』でカッタッパに発していた宣言を見事に成就させたことになる。そしてIMAX版では、燃えゆくバラーラデーヴァを見る時、その台詞を再生している。個人的にはちょっと説明過多に感じたため、従来の方が好みである。

 

まとめ: シヴァガミになれる映画体験

この映画はたいへん耳と目に訴えかける映像表現に満ちていた。このIMAX版ではそれが更に強化されている。

筆者は映画館のど真ん中に座って見ていたため、本来なら見やすいはずだ。しかし、バーフバリの作り込まれた映像をすべて見切ることは、非常に難しい。ぼうっとして何かを見逃してしまわぬよう、目を見開いていた。そう、自分はシヴァガミになったのである。それは目を皿のように見開くほどに映像が素晴らしかったということの証左だ。

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おそらく、この映画を観た人はみんなシヴァガミになることだろう。

画面の端から端をじっと見て、効果音のひとつひとつに耳を傾け、その壮大なドラマに心奪われているうちに、体力を大いに使ったらしく、劇場が明るくなった時には充実感と同時に大きな疲労もあった。ビッジャラデーヴァにバーフバリの犯行(嘘)を聞かされ崩れていたシヴァガミのように、自分も力を奪われたのである。

『バーフバリ』をIMAXで体験したことによって、ゴージャスな映像にいっそう入り浸り、その映像に恥じぬ物語を再確認することができた。

「心ここに在らず、マヒシュマティにあり」なバーフバリファンに是非とも勧めたい体験であった。

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