何のために生み出されたのかわからない無進化『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』レビュー【ネタバレ】

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アイキャッチ画像: (C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

こんにちは、ポケモン剣盾はもちろん両方購入予定のワタリ(@wataridley)です。

今回は『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の感想を述べていきたいと思います。

今作は、アニメ『ポケットモンスター』シリーズ初の劇場版にして今なお最高傑作と語り継がれる『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲(1998)』を3DCGでリメイクしただけでした。

感想は以上

読んでいただきありがとうございました。

 

というのは、あまりにも納得できないのですが、本当にそれだけでした。この2019年のご時世になって変わった社会情勢や価値観は全く入れ込まれず、大きな変化点は3DCG以外には見られません。

それでも98分という短くはない時間をこの映画に費やしたのですから(6ポイント無料鑑賞なのでお金はタダ)、一応今作への身の丈の感想を書いていこうと思います。

以降、ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。


評価不能

ワタリ
一言あらすじ「誰が生めと頼んだ!誰が造ってくれと願った!」

まさかの無進化版

冒頭述べた通り、今作は3DCG化された『ミュウツーの逆襲』としか言いようがない内容だ。タイトルについている「EVOVUTION(進化)」がただの飾りになってしまっているほどに、無味無臭な加工しか施されていない。

変化点はあるにはある。しかしそのどれもが、心を揺さぶるレベルに達していない。

例として、「海のカモメに聞いてみな」というかつてポケモンの世界にも動物がいたと窺えるセリフが第3世代以降に登場したポケモン「キャモメ」への差し替えられるといった軽微な修正、3DCG化したことによってミュウツーアイランドを空撮で捉えたカットを多用するなどの映像面での手法の変化はままあるものの、それ自体は「見せ場」として成立していない。もはや間違い探しレベルの違いを交えただけで、実質ほとんど変わっていない。こちらの期待値を超える場面は皆無に等しい。

初めてこれを見る人ならば、お話自体を楽しむことはできるかもしれない。だが、オリジナル版が21年前に公開され、その間ポケモンというコンテンツ自体がモンストラスな規模へ発展していくにつれて、全く『ミュウツーの逆襲』を知らないポケモンファンがいるとは思えないし、いたとしてわざわざリメイクである今回の劇場版に足を運ぶことはあるのだろうか?甚だ疑問である。

 

展開は一切変えないことで問われるクリエイティヴィティ

今作の脚本にクレジットされているのは、オリジナル版と同じく首藤剛志。氏は2010年に亡くなっており、このことから単独脚本としてクレジットされている時点で脚本に手が入っていないであろう可能性は事前情報からも暗に察することは可能であった。

とはいえ、まさか本当にそのまま脚本を使用するとは信じきれなかったというのが本音である。

そもそもの話、創作の手つきとして、見た目だけを取り替えて中身は据え置きなんてことは全く例がない。過去にポケモンで試みられてきたリメイクにしても、何かしらの変化を加えるのが常であった。ゲームで言えば、『ポケットモンスター 金銀』をリメイクした『ハートゴールドソウルシルバー』は、ノスタルジックに浸れるだけの忠実性を保つ一方で、再度プレイし直しても全く飽きさせない新要素を加えていた。

また、サトシを主人公に据えた現在放送中のアニメとはまた別の企画であるスペシャルアニメ『ポケットモンスター THE ORIGIN』にも同じことが言える。

パッケージ裏に書かれていたヒトカゲのニックネーム「セパルトラ」さえも言及するほど原作の再現度が高い同作であったが、レッドにとってのメンターの役割を担うタケシや、レッドとのポケモンバトルを通じて初心を思い出すサカキなど、アニメならではの展開は細々と配置されており、決してゲームそのまんまではなかった。挙げ句の果てには、当時発売を控えていた『ポケットモンスター XY』に登場する「メガシンカ」のプロモーションまで織り込まれていた。

もちろん、これらリメイクにおけるオリジナルからの変化が必ずしも支持されたわけではないということは百も承知である。

しかし、創作とはそうした反発の声を含めて観る側に刺激をもたらす。だから、いつになっても批判も臆さず新しい作品がクリエイターの手によって生み出され続けるのだ。

その点、この『ミュウツーの逆襲』は脚本を使いまわしただけなので、創造性に根本的な疑問を呈してしまう。テーマを補強するための展開はほとんどなく、あるいはリメイクであることを逆手に取った予想の裏切りも見られない。序盤におけるミュウツーの誕生過程が、オリジナルの劇場公開版そのまんまだった時点で生じていた嫌な予感は、そっくりそのまま的中し、「何のためにこの映画は作られたのか?」という存在論的疑問までもが浮かび上がる始末である。

オリジナルは21年も前の作品だ。その間さまざまな価値観や文化が生まれ、育まれてきた。それこそミュウとミュウツーのように、親から子が、本物から模倣品が生み出されてもきたことだろう。しかし、それらへの言及も特になく、ただ再現しただけなので、語り直した意義が全く感じられなかった。

もっというと、今作は『ミュウツーの逆襲』の劇場公開版の再現であって、完全版の再現ではない。劇場公開版→完全版でミュウツーの生い立ちを掘り下げることで、クライマックスの和解が持つ意味が深化しているのに、今作はそれがなかったかのように劇場公開版に戻ってしまっている。当然、テーマの掘り下げや改変があるだろうと思っていたからとてつもなく肩透かしだった

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

 

特段の視覚快楽もない3DCG

変わりばえしない中身であるが、唯一3DCG部分だけは明らかな変化点である。しかし残念ながら、これがプラスに振れることはない。むしろマイナスにすら感じられる。

奇しくも同年公開にして同じくミュウツーが登場した映画『名探偵ピカチュウ』では、「ポケモンが現実にいたらどんな姿か?」を徹底的にシミュレートし、その上で原作にも通じる愛嬌をきちんと付与していた。もふもふのピカチュウがデッ○プールでお馴染みのライアン・レイノルズの声でしゃべるというのも新鮮であったし、ミュウツーのパブリックイメージを利用した脚本にもなっており、大小さまざまな挑戦が試みられていた。

一方、『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』はアニメのキャラクターをそのまま3DCGで描き起こした程度のものばかりで、こだわりが感じられない。

例えば、サトシたち一行を見ても一目瞭然である。服装のカラーリング、体型、顔のパーツの対比など、微妙な調整はあるかもしれなが、大した変化が見られない。元々アニメ(平面の絵)のために作られたキャラクターが、そのまま立体化した際に生じる違和感も放置されているかのようである。(そういえば3D化したジュンサーさんのスカートが短すぎて驚愕した。)

立体感が付与されることでより人間に近づいたはずなのに、顔の造形はアニメ的なので、まるでよくできた人形を見ているかのような気分になる。目に光が宿っていないのも怖い。タケシが年上の女性をナンパするシーンは特に不気味で、細目のままで顔の動きも乏しいのに、身振り手振りだけは大げさな様子を見て、「不気味の谷」が脳裏に思い浮かんだほどだ。

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ポケモンたちも中途半端に写実性を担保しようとしているのか、毛を生やしたり、シワをつけたりしているが、どれも半端なことをしているように見えてしまう。アニメにおける作画と変わらず、整った曲線を描いたボディから毛が生えているピカチュウは、一体アニメとリアルのどちらに寄せたいのかもわからない。

アニメだから成立していた演出や表現を据え置いた結果、違和感が生じているシーンも見られる。カイリューがサトシたちの食卓を吹っ飛ばして招待状を届けるシーンでは、アニメならば散らかった食事はギャグとして受け入れられる。しかし、3DCG化すると、この混乱につきまとう不快感が増していた。ミュウツーの技によってサトシの体が吹っ飛ばされる表現にしても、抽象度の高いアニメだから、ダメージ表現のリアリティのなさに納得できたのである。それを3DCGにしたら、どうしてあんなに頑丈な体をしているのかといった違和感が生じてしかるべきだ。

3DCGにまつわる不満点には、音の拘りのなさも挙げられる。今作では、映像制作の前に声の収録を行う、通称プレスコを採用しているため、故・石塚運昇氏もナレーションとして声が使用されている。しかし、演者は特に変わらずアニメーション通りのアプローチで演じているため、前述した立体化した人間にはハマらない。映像は奥行きがあって、アニメよりは我々の世界に近い質感だというのに、音だけは空間の反響等を丸々無視していつでもはっきりと聞こえる。これは見ている最中ずっと気になっていた。ピカチュウが走る際にもしっかりとアニメで使用されている音をそのまま使用しているが、生物らしい存在感とは不釣り合いだ。こうした絵と音の不整合は、そのままチープさにつながってしまっていた。

総じて3DCGの恩恵は感じにくい出来である。唯一あるとすれば、ミュウツーアイランドにおける広い空間を見せつけるカメラワークに宿る臨場感、海の水とラストシーンの天候の光が綺麗だったことぐらいだろうか。

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失われたテンポの良さ、投入された間延び

話が変わらない。映像は寧ろ不整合が起きている。そんな状態で、更にはテンポも致命的なほど悪化してしまっている。

元々『ミュウツーの逆襲』は劇場公開版が75分、これに追加シーンを合わせた完全版が85分であり、最低でも90分を超えることが多い商業映画としてはまず間違いなく尺が短い部類に入る。

劇場公開版は見直してみると、中にはあっさりとした描写もあるが、何せ76分だからテンポよく進む。当時テレビアニメを追いかけていた子供たちにとっても集中力を最後まで保つことができたはずだ。

そこにミュウツーの誕生のエピソードを追加した完全版は、タイトルが流れるまでが長くなってしまった感じは否めない。物語が大きく動くわけではない、起承転結の起が長いと、集中力に影響してくるかもしれない。ただ、それでも85分である。

そしてこの『ミュウツーの逆襲 EVLOLUTION』は劇場効果版をベースにしているにもかかわらず、約98分もある。そして、ここまで述べてきたように大した変化がない。

つまりは約20分も間延びしているのである。ロケット団が歌いながら舟を漕ぐシーンや、フシギダネやゼニガメがミュウツーボールに追われるシーン、ミュウとミュウツーの戦闘描写など、オリジナル版とさしてニュアンスが変わるわけでもないシーンを追加したことで、単に話が進むスピードが低下している。脚本は76分のオリジナル版のまま、取る必要性のない尺を20分取っただけ。そうとしかいいようがない。

実際見ている最中、とにかく退屈だった。ミュウツーが登場し、サトシたちと対立を決定的にするまでもやたらとひとつのやり取りが長い。終盤のオリジナル対コピーの対決も、とにかくワンカットワンカットが執拗で、お涙頂戴を誘おうとする魂胆が透けて見える。

元の劇場公開版はコンパクトにまとまっていたおかげで退屈する間もなかったのだが、間延びさせた結果としてこのような事態に陥っているのは、もはや無意味どころか損ですらあるだろう。

演出面でも、ミュウツーアイランドへの招待状を受け取ったサトシたちを監視するシーンでミュウツーがふつうに顔が分かる状態で登場してしまい、その後のサトシたちとの初対面シーンのインパクトが薄れていたりするなど、とにかく追加・変更して良かったと思える場面が無かった

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2019 ピカチュウプロジェクト

 

まとめ: 一体これのどこが“EVOLUTION”なのか?

アニメ『ポケットモンスター』初の劇場版にして根強い人気を誇る『ミュウツーの逆襲』をリメイクする意義がどこにあったのか。終ぞわかることなく劇場を後にすることになった。

タイトルにある「EVOLUTION」とはかけ離れた内容であり、どうしてこんな題名にしたのかも不明である。進化どころか無進化であり、皮肉なジョークのように思えてならない。

全く変えなかったことによって、劇中語られる「本物もコピーも生まれた時点で等しく生きている」というメッセージがこの映画に対する言い訳のように聞こえてしまい、あとで思い返してみても失笑してしまうレベルである。

ポケモン映画の興行収入は、『水の都の護神 ラティアスとラティオス』で一旦歴代最低を記録し、その後『七夜の願い星 ジラーチ』で前売り券限定の配布ポケモンで回復。そして、『ディアルガVSパルキアVSダークライ』でもワイヤレス通信による配布ポケモンで再び快調に入るも、アニメシリーズ『ポケットモンスター ベストウイッシュ』に入って以来、下降し、『ボルケニオンと機巧のマギアナ』で現状最低の21.5億となってしまった。この経緯があって、2017年には原点回帰色を打ち出した『キミに決めた!』、2018年には幅広いポケモンユーザーにアピールした『みんなの物語』を発表し、どちらも30億に到達した。この興行収入の回復を狙った路線は、危機感によるものとはいえ、倦怠感が漂っていたポケモン映画を変えようとしているのだと好意的に見ていた。

しかし、そこにきてこの『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は、今なおシリーズ最高の興収記録を持つ作品に寄り掛かろうとしているようで、全く賛同することができない。こうした変化を追い求めない作品作りは、創作の姿勢に疑問を呈する。

ポケモンコンテンツ全体では今秋にNintendo Switch専用ソフト『ポケットモンスター ソード・シールド』が発売されて、また活気付くはずだ。来年の映画は、再び心機一転を図ることができる機会だろう。そこで勝負を仕掛けてくることを微かであるが期待して待ちたいと思う。

 

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