こんちには、平日よりも休日が大好きなワタリ(@wataridley)です。
昨年3月に発売された「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」。
そのDLC第2弾として昨年12月にローンチされた「英傑たちの詩」の感想を、今更ながらに述べていきます。
一言にまとめてしまうとこのDLCは「革新的で驚きに満ちていた本編とは対照的なまでにおとなしくお利口な作り」でした。
思い返すと昨年の3月、自分は春休み真っ只中。そこにやってきたニンテンドースイッチとゼルダは、自分の時間をみるみると奪っていき、驚きと興奮、そして感動をもたらしてくれました。春休みはずっとゼルダのことで頭がいっぱいでした。一通りのゲーム内要素に触れて熱が落ち着いてからも、ゼルダBotWは傑作ゲームとして胸に刻まれ、折に触れてあのハイラルの世界での大冒険を思い返すこともあったぐらいです。
そんな満足感は、やがてくる追加要素への期待感を醸成させていました。
こんなに凄いゲームのDLCなんだから凄いに違いない、と。
そしていざプレイした感触として、あの無欠の作品の続きを体験しているということの確かな満足感を得ていました。
しかし一方で、どこか物足りなさを覚えていたのも事実です。「え?これだけ?」とか「もっと変化球を曲げてくれよ!」といった小言を心の中で何回か口にしてしまいました。
このDLCは、面白いけど不満もあります。
以下で、詳細にDLCに対しての私感を述べていきます。よろしければお付き合いください。

目次
本編の作りをなぞったことによる新鮮味不足
DLC「英傑たちの詩」をプレイしていて思ったのが、本編と流れが同じであるということ。更には、本編と全く同じプレイを要求されるパートも存在していて、目新しさを欠く要因になっているとも感じました。
感想①「また祠探しか…」
恐らく自分以外にも多くの方が抱いたであろう感想が「祠探しへの飽き」でしょう。
神獣ダンジョンが全てクリア済みであることで、プレイできる「英傑たちの詩」の大まかな流れは以下の通り。
- 始まりの台地にて、一撃死する体力状態で4つの祠を攻略する
- ハイラルの各地に散らばった台座へ向かう
- 台座に示された地図をヒントに3つの祠を探す
- 祠を攻略する
- 3つの祠を終えたら神獣を訪ね、ボス戦
- また別の台座へ向かう
- 4体のボスを倒し終えたら最後に大型のダンジョン
これらのプロセスを振り返ってみると、多くの時間が「探し物」に充てられています。これが、新鮮味を削いでしまっているように感じました。
言ってしまえば本編も探し物が中心のゲームデザインでした。祠以外にも、コログ探し、武器のハスクラ、素材集め、馬宿や人里探しなどのために動き回る時間でプレイ時間の大半が占められていました。
何か目的があって、それに向かうための旅。
ブレスオブザワイルドの自由度が評価されている理由がまさにここにありますよね。
従来のゼルダと異なり、順番に攻略していくことを定められたダンジョンなどではなく、自ら数多くの選択肢から選び取ることができます。旅をしている最中にも多くのアクシデントやサプライズがあります。
その評価点が、今回の「英傑たちの詩」には存在しないんですよね。祠を探すことは決まっていて、自分が決められるのは、「どこから着手していくか、どこを後回しにするか」という順番程度。
初めて本編をプレイしていた時は、「見知らぬ世界のどこかにある物を探す」という気持ちが高揚感をもたらしてもくれたのですが、DLCの祠探しは「既に見知った世界で」やることだったので、その点でも感情の振れ幅は小さかったですね。
追加された祠の数自体は、「始まりの台地の4つ+4神獣の各1体につき3つ」の計16個とそれなりのボリューム。さらに最後のダンジョンは神獣に匹敵するボリュームと今作の締めくくりに相応しいダイナミックな仕掛けがあるので、「英傑たちの詩」の質と量に関しては十分と言えます。
ただ、やっぱりこのDLCを買うようなプレイヤーに向けた内容としてはあまりに新鮮味がないと思ってしまいました。発売してから9ヵ月経った後の発売ということで、それも加味したどんでん返しがあったり、いい意味でプレイヤーを出し抜くような作りにしてほしかったというのが正直なところです。
ダンジョンの形式を本編と同じ「祠探し→祠攻略」にするのではなく、「歩いていたら怪しげな洞窟を見つけて中に入る」だとか「村の近くに魔物が秘密基地を作っていたので攻め入る」といった風に変化が欲しかったですね。
感想②「またカースガノンか…」
そんな本編と変わり映えがしない「祠探し」が全て終わった時、導師から試練として課されるのが「己の中で敵を打ち克て」というもの。
どんな敵がやってくるのか?と期待しながら画面が暗転し、出てきた場所と敵に目を疑いました。


またガースガノンかよ!
こう思ってしまうのも無理はないでしょう。何せ、この「英傑たちの詩」をプレイするための前提条件として「すべての神獣をクリアしていること」があったわけで、全プレイヤーが4体のカースガノンと既に戦った状態なのです。
更に言えば、自分は元々各大型ダンジョンのボスがみんなカースガノンであったことに少なからず不満がありました。
たしかに、水・炎・風・雷と種類分けされ、攻撃パターンもみな差別化されてはいます。
しかし、4体とも見た目が似通っていることと、ダメージを与える手段は結局「威力の高い剣で殴るor威力の高い弓矢を連射する」で事実上統一されています。そのため、自分は2体目のカースガノンの時点でマンネリを感じてしまいました。
今までのゼルダシリーズでは、ダンジョンの最奥に待ち受けるボスにきちんと個性がありました。
「時のオカリナ」の最初のダンジョン「デクの木サマの中」のボス部屋に入って、しばらく何も起こらない中、「ふと見上げると天井に…」という導入が非常に印象的だったゴーマ。

「時のオカリナ」の最後のダンジョン「魂の神殿」のボス、ツインローバからの攻撃をミラーシールドに吸収し、跳ね返すという熱い展開。

「ムジュラの仮面」でゴロン族に変身しながら攻略するダンジョン「スノーヘッドの神殿」のボス ゴートと繰り広げるレースゲーム。

「風のタクト」の後半のダンジョン「風の神殿」では、戦闘曲がシリーズでも最も人気なモルド・ゲイラと砂地獄を囲んで戦うという独特なシチュエーション。

幼いころに経験したボス戦の雰囲気が今でも鮮明に蘇ってきます。
しかし、ブレスオブザワイルドのボスであるカースガノンは、それぞれに強い個性が置かれていないためか、あまり印象に残りません。
今回のDLCでは、その本編の短所部分をそのまま引き継いでしまっていることが惜しいと思いました。
「かつて戦った敵と再戦」というシチュエーション自体を否定するつもりはありませんが、クリアしてから暫くの時間が空き、お金を払ってプレイする部分で、やられてしまうと不満に結びついてしまいます。
肝心の戦闘にしても、カースガノンの行動パターン自体は全く変わっていない所が拍子抜け。リンクの装備品・所持品一式が制限されているだけという有様。ここに関しては手抜きなのか、リソース不足なのかを疑ってしまいました。

一応、神獣をクリアしたデータでカースガノンと再戦できるようになった点は、DLCの明確な追加要素ではありますが、普通にDLCじゃなくても再戦できるようにすればいいのではないかとも思います。
本編をプレイした前提で課されるボス戦なので、やはりそこは新規のボスをそれぞれの神獣に配置するなどの工夫が必要でした。
「キングダムハーツ2 FINAL MIX+」の留まりし思念のようなストーリーを深堀する重要な存在で、かつ手ごたえがあって何度も戦いたくなるボスみたいなのが個人的には欲しかったです。最後に立ちはだかってきた導師にはびっくりしましたが、再戦したくなる感じもありませんでした。
感想③「英傑たちのドラマをもっとちょうだい!」
前述2つの不満点がDLCの短所を指摘している一方で、この3つ目の感想は自分の願望によるところが大きいです。
このDLCは名がさす通り、英傑たちのドラマを補完する役割があります。
ただ、自分にはまだこれでも物足りなさを感じてしまいました。
今回主に新規収録された英傑たちの追加情報としては以下の通り。
- ゾーラの里、ゲルドの街、ゴロンシティ、リトの村の各所に英傑たちの日記が設置
- 神獣操りの試練クリア後に英傑が登場するムービー
- 神獣操りの試練クリアしてからカースガノンとの再戦後の台詞
リーバルは自信家の裏に隠していた努力家である一面を、ダルケルは犬が苦手という意外な弱点を、ミファーはシドを優しく導く姉としての顔を、ウルボザは武術家としての優れたる姿をそれぞれ見せてくれました。
彼らの姿をもう一度見ることができてとてもうれしい反面、本編同様に断片的にしか彼らのキャラクターを味わうことができないもどかしさも覚えました。
日記における情報は厄災ガノンの復活までのそれぞれの心情を明らかにしてはいるけれど、テキスト形式でゲームとしては味気ない。

ムービーはアニメのように面白く見られるものの、如何せん尺が短い。

カースガノン再戦後の台詞もパターンはあるが、新情報に乏しい。

ゼルダは万人に向けたRPGであるため、「ゼノブレイド2」のように長々としたムービーを挿入して、キャラクターの掛け合いに時間を割くという手段に消極的であることはわかります。
とはいえ、クリアして彼らの新たな一面を見たいという需要に応えることができるのもDLCの利点。個人的には本格的なムービーをもっと多く挿入したり、カースガノンの代わりにボスキャラとして訓練してくれるような形で同居させてほしいという欲求が沸きました。
この感想に関しては、かなり自分のわがままが強く出ているので、共感はあまり得られないかもしれません。
感想④「エンドコンテンツや新しい遊びは無いのか?」
「英傑たちの詩」をいよいよクリアして、宣伝でも最後のサプライズとして打ち出されたマスターバイク零式をゲット。
しばらく、ハイラルの大地にバイクを走らせました。

明らかにタイヤが足止めを喰らう砂漠などの一部地域を除けば、崖も雪山も走行可能。


エネルギー補給は冒険で手に入れた素材。

…30分ぐらいで飽きてしまいました。
ゼルダの世界でバイクを操縦できるとなると、一見非常に新たな遊びが出来るのではないかと思っていたのですが、過度な期待は禁物です。
馬が走行を拒否する急な崖や高所からの飛び降り等が出来るという点でバイクは自由度が高いですが、馬よりも圧倒的に性能が優れているというわけでもありません。
バイクのスピードは速度最高の馬と同等であり、とびぬけて速いわけではないです。崖を登れるといってもやはりあまりに急な崖は上れず、地味に走行距離はエネルギーが持つ限りの有限です(尤もこのバイクを手に入れるぐらいゲームを進めた時点でエネルギーとなる素材に困るなんてことはないでしょうが)。
このようにクリア後に手に入れるアイテムにしてはやけに性能が控え目であることが気になりました。古代兵器のアンティーク感と今めかしいバイクを組み合わせたビジュアルが非常に格好いいのですが、その外見ともリンク専用の神獣であるという設定とも釣り合うような能力とは思えず、ぶっちゃけ一言でただのバイクでした。
いつでもどこでも呼び出せるのは便利ですが、ただのバイクをクリア後に与えられてもやることがない…というのが本音です。
マスターバイク零式はてっきり新しい遊び方を提供してくれるものだと思っていたのですが、蓋を開けてみたら馬とは互換的な関係にあり、9ヵ月というブランクを飛び越えて得たかった満足には達しませんでした。いっそのこと補給する素材によってとんでもない性能にパワーアップするみたいな工夫をやっても良かったと思います。
また、バイクを使ってハイラルを一周してタイムをオンラインで競い合うミニゲームを設けてくれたりしたら、エンドコンテンツとして楽しむことはできたと思うのですが、ゲーム内には見当たりません。
バイクを手に入れたところで、どう遊ぶのかをまるっきりプレイヤーに委ねられてしまったので、既に全クリしてやることがない場合、持て余してしまうのが気掛かりでした。「英傑たちの詩」の最後のご褒美として与えられても、遊び方が劇的に変わるようでもなかったです。
「試練の覇者」の剣の試練やマスターモードでやったからだという見方もありますが、それらは上級者向けでとっつきにくい部分もあったので、「英傑たちの詩」でエンドコンテンツが無いのはやや残念です。
まとめ
不満点を羅列する形になってしまいましたが、2500円という値段に見合った内容であることに間違いはありません。ブレスオブザワイルド本体と合わせてこれほどまでに楽しいゲーム体験は今まで無かったですし、これからもあるのかわからないという具合に傑作級のゲームでした。
ただ、本編が非常に精巧に作りこまれ、かつ旧来のゼルダの仕組みを創造的に破壊するようなイノベーティヴな作りであったことを考えると、DLCはやや守りの姿勢に入ったなぁというのが正直な感想です。
途中に書いたように追加された祠とダンジョンの質と量に申し分はありません。ただ、プレイヤーへの届け方が本編とそっくりそのまま同じだったため既視感を覚えてしまい、没入するうえでノイズになってしまったということです。
おそらくDLC第3弾は無いものだと思います。ゼルダの開発チームは既に次回作に着手していることでしょう。
もし次回作でもDLCを行う際にプレイヤーが求めているものをより考慮したうえで作ってくれたら、いっそう優れた追加要素を生み出せる可能性は十分に感じました。
任天堂はこれまで追加料金を支払う形式のDLCは他企業に比べて消極的な気がしましたが、ゼルダのDLCは傑作の本編に更に上乗せする内容だったため自分にはとても誠実な商売に映りました。
それでは、これから来るべきSwitchのゼルダがどんなものなのか、期待を膨らませて待つとします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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