『ボンバーマンジェッターズ』 22・23話感想

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第22話 マイティの一番長い日

あっという間に一天王になってしまったボンバー四天王。バグラーにその体たらくを咎められ、ムジョーは辺境の星で郵便配達を命じられてしまう。

ムジョーが飛ばされてもサンダーボンバーはあくまで彼のためにヒゲヒゲ団内部での不穏な動きを察知し、メカードにマックスの追放を進言する。まあしかし、そのメカードも……。

サンダーボンダーは他のボンバー四天王と比較して、ムジョーへの忠誠心が特段に描かれたり、前回でグランボンバーへの面倒見の良さを見せたり、ヒゲヒゲ団の政治情勢にもタッチし、マックスへの対抗心を燃やす等、かなり美味しい役どころである。前後編の2回で退場しないあたりも明確に扱いが違っている。

マックスとバーディの対決。マックスにこれまでずっと宇宙に一つしかないものを奪われ続けてきたが、今回は不意をついて一矢報いる。やはりバーディはできる男。冷静な判断力があり、飛行能力持ちで、マックスに撤退を判断させる程の飛び道具持ち、と戦闘面のスペックが高い。

ムジョーはムジョーでマックスの情報を探る様子が描かれる。複数の登場人物の動きが並行しているのだが、単にシロボン目線でのみ完結せずに、それぞれの目線と行動を通じてメインプロットに寄与していく話の作り込みがまさにジェッターズ。

そしてバーディの口から1話の直後に何があったのかが語られる。実は1話の熱線射撃でバーディもマイティも深刻な傷を負っていたものの、マイティはそのことを隠し単独でヒゲヒゲ団の基地へ向かってしまったのだ。大爆発が起きた跡地にはマイティのバッジがあり、状況を見れば生存は絶望的かに思える。そんな中現れたマックスと名乗る謎の人物。バーディは自身の抱いた印象からマックス=マイティ説に懐疑的である一方、シロボンはマックスに希望を見出そうとバーディの話を聞かずに走り出す。1年も失踪していた兄を彷彿とさせる人物にすがりたいと思うのも、その人物の冷酷さ故に否定したいと思うのも、二者二様で、マイティを巡る周囲の人物の混乱がそれぞれの立場で描かれている。

 

第23話 シャウトの涙

マイティの情報を持っているというナイトリーの連絡を受け、バーディが向かった先に待ち受けていたのはまさかのムジョー。意外な組み合わせだが、実のところ利害は一致している。バーディはマイティの行方、ムジョーはマックスの情報を得るための取引と見せかけて、ムジョーにとってはそれは方便で実際にはマイティが死んでしまった事実をジェッターズ側にも共有することが目的だったというわけだ。既に左遷が決定しているムジョーにとって直接的な利益を得られる取引ではないのだが、ムジョーは憎めない悪役として義理堅い面を持ち合わせていることをここまで視聴者に納得させているがために、この取引に際しての彼の動機(マイティの死を知った以上親しかった者に知らせない訳にはいかない)を察することができる、という極めて巧みな行動描写だと思う。

バーディを尾行していたシャウトは期せずしてマイティが死んだことを知ってしまう。そのことをシロボンに隠しつつも、いつも通りシロボンに振る舞えない。シャウトも母親がいないことから、兄を喪ったシロボンに対して、それを受け入れられていない様に苛立ちとも憐憫とも言えるような複雑な感情を抱くことになる。

シャウト目線では非常にシリアスなトーンで展開される一方で、何もしらないシロボン達は彼女の悩みを察しようと「いつものノリ」で励まそうとするという両者のギャップがもどかしい。ジェッターズ自体、コメディとシリアスを往来するダイナミックな作風の振り幅がウリではあるが、この23話は特にそれを象徴する回に仕上がっている。

しかし、こうしてみると、本筋に絡まないサブキャラの性質が強いガングやボンゴ(とルーイ)は今回もマイティの死という核心から離れた位置にいるが、逆説的にジェッターズという作品に必要不可欠な存在と見ることができる。もし彼らがいなければ、こういったコメディテイストの強いやり取りを任せっきりにできるキャラクターを欠いてしまう訳で、そうなると作品はシリアス方面に関与するキャラだけで構成される。それはジェッターズという作品がギリギリ保っているバランスをシリアスに傾けてしまいかねない。その意味で、友達のようであり先輩でもあるガング達はシロボンにとっても、作品にとっても重要なのである。

ちなみに23話に出てくる繁盛しているラーメン屋は、後の36話でも再登場。そこでもシャウトの悩みのタネになっているわけで、今回ガングのヒゲヒゲ団に化けるのが得意発言(7話 ヒゲヒゲ団を追いかけろ!)や、マイティのたこ焼き好き(32話 憧れのシロボン)など、末梢に思える描写も他の回につながっており、広まりを見せる。

五番目の四天王と聞いてそういえば放送時期的に五人衆なのに六人いるネタをやっていたボボボーボ・ボーボボを思い出したが、放送はこちらのほうが先だった。

12話でヒロシに対して披露していた花火ボムを再度投げるシロボン。あの時はヒロシを励ますために投げてマイティを思い出していたが、ここではいつまでもお兄ちゃんに引きずられるなという真逆の文脈がもたらされる。この後に訪れる静寂を引き立てる効果としても機能する。

「お兄ちゃんは死んだの!」といってしまうシーンの演出は見ているこちらの顔が引き攣るぐらいの切れ味がある。BGMが鳴り止むタイミング、時が静止したシロボン達、それを言ってしまったシャウトの背中から徐々に表情へクローズアップしていくカットの移り。今度はそれを問い詰めるシロボンの表情が視聴者側に開示されなくなる不安感。画面に釘付けになったまま、気持ちは宙ぶらりんのまま、次回へ続くという幕引きには脱帽させられる。

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