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今日は『心が叫びたがってるんだ。』についての感想。
ネタバレ無しです。
60/100
一言あらすじ「喋れない少女がミュージカルに挑戦する群青劇」
元「ここさけ」は、2015年の夏に劇場公開された
映画オリジナルのアニメーション作品。
過去に人気アニメ「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない」
を制作したスタッフが作ったことから期待値は高く、
それがたったの2年で実写化という中々に思いきった企画。
キャスティングでは、
主演にジャニーズの人気アイドル中島健人さん、
元朝ドラヒロインの芳根京子さん、
助演にE-girls石井杏奈さんと、
佐藤浩市さんの子息として話題になった 寛一郎さんが起用され、
原作のアニメは、
心にわだかまりを抱えた4人の高校生たちを描いているとあって
若手の人気俳優をあてれば通用するはずですし、
非現実的な画も少ないことから実写化は一見とても簡単のように思えました。
しかし、「ここさけ」は成瀬順という少女が実に非現実的であり、とてもハードルが高い作品だと思いました。
「喋るとお腹が痛くなってしまう」というアニメの設定は誰でも表現は出来ても、
現実に持ち込んだ時点で一気に嘘臭さや冗長さを感じてしまいがちです。
お芝居とその撮り方には気を使わないと
滑稽になってしまいかねない不安定な要素でしょう。
これがはっきり評価を下すと、
芳根京子さんの演技は素晴らしいけど、演出や表現は工夫がない、と言えます。
彼女は劇中ほぼ喋らないため、
表情の揺り動きによって感情表現をするとてもハードな役回りでしたが、
そこがとても上手でした。
作中のとあるシーンで、
一旦は喜び、その後ちょっぴり落胆する変化を
顔と微かな動きだけで難なく演じております。
ところが、これを撮る側が
実写向けに成瀬順の調整を行ったようには見えず
アニメの流れをそのまま撮っているだけなので
どうにもこうにも折角の芳根さんの芝居がオーバーアクトになってしまうのです。
アニメのキャラクターの仕草をそのままコスプレイヤーが再現しても、
どうしても違和感がつきまとうようなものだと思います。
ドラゴンホールの悟空の髪型が漫画では通用しても、
現実ではおどろおどろしくなる原理です。
「現実のリアリティ」と「フィクション上
リアリティ」は別物で、
再現一辺倒ではいけないしょう。
ちょっと話を逸れて、
他のキャラクターにも触れていくと、
坂上拓実を演じた中島健人さんは、
ルックスとお芝居の両方で見所があり、
ファンの方も、そうでない方も、
彼の魅力を知ることが出来ると思います。
アイドルとあって作中のミュージカルシーンでの歌唱も
なかなか甘いボイスで、見応えありました。
石井杏奈さんもミュージカルでは物慣れた様子でしたし、
仁藤菜月のもつ生真面目そうな雰囲気に合わせた役に徹していました。
寛一郎さんも(ナミヤ雑貨店の奇蹟と前後しますが)この映画が初出演作とは思えないくらいに
負傷した野球部のエースという陰あり光ありの難役を演じてましたね。
顔立ちがやはり三國連太郎、佐藤浩市の両名に似ており、
作中見せる田崎の不貞腐れた表情を観ると、つい彼らを連想しました。
祖父、父と名の知れた役者さんですが、
ご本人の魅力も本作で伝わってきたので、
今秋公開の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」以降も注目していきたいですね。
さて話を戻しますが、
本作は上記の通りキャスティング面は悪くはないものの、
アニメの再現に難があったという評価に落ち着きます。
成瀬順の喋れない「呪い」の他にも、
浮気をした父親の順に対する発言や、
母親が喋れなくなった順に苛立ちを見せる様子などの的外れな態度、
そもそも喋れないまま学校生活を営むことは可能なのかといった現実感の無さが
実写化したことによって浮き彫りになってしまい、
「これは元々アニメだった映画」と思ってみないと苦しい部分があります。
キャスティングをはじめとした画作りや再現は及第点だけど、
実写化にあたっての工夫や配慮が足りなかった。
という評価で落ち着きます。
話そのものは、内気な少女が外交的になっていく過程や
クラス一団となって催し物を作っていく団結があるので、
終盤の展開に賛否両論あるものの、
青春ものとしては期待する物は得られるのではないかと思いました。
元のヒットアニメという土台があるため、そこは強みですね。
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