『SSSS.GRIDMAN』第10話「崩・壊」感想: この世界の終わりの始まり

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アイキャッチ画像: ©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

こんにちは、ワタリ(@wataridley)です。

SSSS.GRIDMAN』第10話「崩・壊」の感想を語ります。

▼前回感想

 

「崩壊」していく世界

これまでの敗北や拒絶を経て、つきものが落ちたアカネはまともな怪獣を生成できなくなる。アレクシスに差し出したいびつな怪獣は、案の定簡単に倒される。

その後出てきた怪獣は、不気味な呻き声と共にこの世界を形成していた怪獣を破壊し始める。この怪獣は6話や8話の種明かしによると、破壊された世界を修復する役割を持ち、果ては六花がそこから生まれたというように、街の人々の母体である可能性さえある。だから、新条アカネが作り出した怪獣がこの破壊行為に及んだのは、いよいよ彼女がこの世界を否定し始めたことを表しているように思えてならない。

響裕太たちグリッドマン同盟が自分の領域を侵し、もはやアカネの望みは自由がきかなくなった。それまでは世界の不都合な一部分を破壊と修復でもみ消してきたが、それすら叶わなくなった今、世界そのものに失望したと考えられる。アカネ自身は中の怪獣が破壊していく様に驚きを見せていたが、潜在的にはやはりこの世界の崩壊を望んでいたのだろう。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

問川たちが出てきた夢はグリッドマン達によって自分の願望が叶わなくなってきた恐怖が顕在化したもので、アカネにとっての当たり前が崩壊しつつあることを印象付ける。そして、街の修復や霧を発生させる怪獣を破壊し尽し、この街はアカネにとっての逃げ道としての機能を失った恐れがある。そしてこの世界の見せかけの平和に追い打ちをかけたのが、最後の凶行である。

アカネ視点とみられるカットでは画面は何も映っていないことから、グリッドマンの画面はどうやら見えていないらしい。彼との会話を望む訳は、敵対者への興味からと取れる。しかし考えようによっては、この擬似世界からの救世主として彼を求めているようにも思える。

何はともあれ、裕太は危機的状況に陥り、アカネは荒んだ精神の逃げ場が絶たれた。これを書いている今も衝撃的な結末から頭を離脱させることができないでいる。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

 

人の心を育んだアンチ=グリッドナイト

彼女の願望を身に受けた怪獣は、不気味な声と不可解な動きでフルパワーグリッドマンを圧倒する。

このシーンにおけるアクションの躍動感は高く、次々とあの手この手を繰り出していく怪獣の異質さが際立っている。街のビルを引っこ抜いたり、甚大な被害をもたらすビーム攻撃を速攻で放つ姿に、グリッドマンどころか世界そのものを破壊し尽さんとする凶暴性が見えた。これまでの陸上歩行型の怪獣と異なり、体全体をダイナミックに飛ばして攻撃を回避する作画描写も素晴らしかった。

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グリッドマンのピンチに駆けつけたアンチも、荒ぶる格闘的センスを見せつけながら、武骨に戦っていく。グリッドマンを倒すために生まれ、グリッドマンを倒すために生きると決意した彼が、グリッドナイトに変貌し、新条アカネの心の内を読んで勝利する流れは、猪突猛進でひた向きなアンチの成長を印象付ける戦闘シーンになっていた。ボラーから雨の日は傘をさすことを教わり今回アカネにビニール傘を差し出していたことから見ても、その率直ぶりは人間以上だ。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

 

まとめ: 残り2話でどう掬い、救うのか。

「崩・壊」はこれ以上ないタイトルだ。前半パートでは新条アカネがいないことで平穏な日々を送る裕太たちを描き、後半では街を見下ろす怪獣の破壊やアカネの退廃的な心情がアンチとの会話や中の怪獣によって浮き彫りにされる。結末は、それまで一応は日常で同級生同士であった2人が、後戻りできない過ちに囚われてしまう。もはや修復はかなわない。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

その真意と素性を隠すアレクシスとの対決はオープニング映像にあるように既定路線だろう。果たしてその決戦が裕太たちとこの世界、そしてアカネにとっての決着になり得るのか、些か不安ではある。

というのも、残された謎は非常に多いからだ。

ラスボスであろうアレクシス・ケリブの真の狙いとその正体についてはもちろん、グリッドマンの持つ超常的な能力の根源、新世紀中学生との合体を可能とするロジックも未だに不明だ。また、この世界の実態については第1話ラストの修復された学校の描写からずっと眼前にぶら下がってきた謎である。アカネが世界の維持をあきらめた今、どうなってしまうのかも気になって仕方ない。

これらの壮大な世界と超常現象に気を取られがちだが、響裕太個人の素性や記憶喪失前の出来事についてもわからないことだらけだ。怪獣少女曰く、先祖がお世話になったという裕太は特別な出自にあるのかもしれず、それがグリッドマンへのアクセスフラッシュに通じているのはほぼ間違いないだろう。

また、アカネを好きになるように設定されながらも特別と称される六花との関係も、日常の中ではいまだに距離を詰められないままだ。

©円谷プロ ©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

これまで今作は怪獣とのバトル、世界崩壊の危機を学生たる裕太たちの日常と結びつけて描かれてきた。壮大な戦いと裕太たちの等身大なドラマの対比が融合し、着地する様は自分の想像では及びもつかない部分が多い。しかし、これをすっきりと締めてくれたら折に触れて思い起こす作品のひとつとなるに違いない。

燻る胸の不安が、クライマックスでは悦びとして燃え盛ることを期待する。

▼次回感想

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