こんにちは、ワタリ(@wataridley)です。
さて、今回は大人気漫画「鋼の錬金術師」
…のアニメ「鋼の錬金術師(以下03年版)」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST(以下FA版)」のオープニング曲について私感を述べていこうと思います。
「鋼の錬金術師」については、以前に実写映画をレビューしたのですが、あれ以来原作やアニメにも興味を持ち、軽くAmazon Primeビデオで観てみました。
そこで思ったのが、ハガレンはオープニング曲にやたら恵まれているアニメだ!ということ。
オープニングはアニメの顔とも言える存在です。
ハガレンのアニメは観ていなかった自分にもポルノグラフィティのメリッサは耳にしていました。
エヴァと言えば『残酷な天使のテーゼ』
ワンピースと言えば『ウィーアー!』
幽遊白書と言えば『微笑みの爆弾』
このように、アニメと音楽は密接に結びつくことで相乗効果をもたらします。アニメのオープニング曲は作品のイメージを決定付け、それ自体も鑑賞対象になる一石二鳥の芸術作品です。アニメはアニメで曲に合わせて毎週流す映像を作りこみ、ビジュアル面でも視聴者にインパクトを与えてくれます。
ハガレンはどのオープニングも曲が良い!映像が良い!言わば文武両道、才色兼備のようなもの。
そんな優れたオープニングの中から、私ワタリが気に入ったものを、独断と偏見に基づいてピックアップしていこうと思います。「曲そのもの」「アニメの映像」「曲とストーリーのシンクロ」の3つを意識して語っていきます。
目次
5位 READY STEADY GO
L’Arc〜en〜Cielによる03年度版ハガレンの2ndオープニングです。
ラルクはハガレン主題歌をこれと劇場版で合わせて3度担当しており、お墨付きのグループみたいですね。
この曲は、底抜けに明るいリズムとメロディで構成されているのが大きな特徴。ちょっと暗いシーンやセンチメンタルな場面が見受けられるのが恒例のハガレンオープニングの中でも異色な曲だと思います。
イントロなどで出てくる英語歌詞はボーカルのhydeがクールに歌い切ってくれてるので日本人歌手にありがちなチープさが皆無。
声質も鋭く、よく通っていて聴き心地が抜群に良い。叫びの部分でも男性歌手とは思えないくらい高く響いていてテンションが上がります。
一番チアーアップに向いている曲調なので、海外のファンからも人気の一曲のようす。
映像面ではエドとアルの旅路の風景から始まり、駆け抜けていく2人を明るく前向きに映しています。
サビの部分ではアームストロング少佐ら軍の面々が颯爽と登場していき、その後一瞬だけスカーやホムンクルスの3人が姿を見せます。
ちなみに、アームストロングのマッスルポーズの後に出てくるホークアイは呆れ顔を浮かべているという細かな小ネタが入っていますね。
ここのあたりの疾走感と爽やかさは、他のハガレンOPにはない印象を受けました。
特にマスタングのキメ顔からの指パッチンは、とても格好良くてお気に入りです。
このアニメが放映された当時は原作があまり本筋に入っていないこともあって、ホムンクルスやスカー等は顔見せ程度。ストーリーのワンシーンを再現するといったオープニングの恒例技もあまりなく、
キャラクター紹介をしていくイメージ映像的な側面が強いですね。
キングブラッドレイ大総統は最後の方で意味ありげに映り込んでいますが、03年版では影が薄いというのがなんとも寂しい。
ウィンリィがエルリック兄弟に手を差し伸べ、彼女が兄弟にとっての支えであることを示すように、本編の内容を暗喩的に表現した映像が03年版ハガレンOPの特徴のようです。
曲のインパクトと軽快な登場人物たちの姿が合わさって、気分上々に盛り上がれるREADY STEDY GOが5位。
4位 ゴールデンタイムラバー
スキマスイッチによるFA版ハガレンの3rdオープニングです。
ドラえもん、NARUTO、そして今作などなど、彼らは結構いろんな漫画原作作品とコラボしている印象がありますね。ちなみに同じく荒川弘原作のアニメ「銀の匙」でもエンディング曲を提供していました。
ゴールデンタイムラバーはフルVersionとテレビSizeを聴き比べると、イントロ部分が多少アレンジされています。自分はテレビサイズの方が好みです。
曲とストーリーはなかなかシンクロしていて、タイアップ曲の経験が豊富なスキマスイッチならではの工夫が見て取れますね。
ボーカルはスキマらしい高くて特徴的な声質でありながら、優しげな普段のイメージよりもシビアな作品の雰囲気に合わせた歌い方にしているようです。スキマスイッチらしさを失わないままに、作品の空気に合わせた素晴らしい曲だと思います。
歌詞には鋼の錬金術師における「等価交換の原則」に沿ったワードが含まれており、本編での展開を考えるのも面白いです。
味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦渋かそう すべては2つに1つ操りたい運命の糸
引用元:スキマスイッチ「ゴールデンタイムラバー」
勝利か敗北か。そのどちらかを取るしか出来ない状況は、「何かの犠牲なしに何も得ることはできない」という二者択一であり、原作のテーマ性と重なる所です。
そのルールを飛び越えられるのは賢者の石であり、それを動力源とするホムンクルスを使役する通称”お父様”が「操りたい運命の糸」と重なり合って映し出されるのが、面白いシンクロだと思います。
際限ないプレッシャーゲーム スルリと抜けて栄光のボーダーライン 飛び越えるためにハウメニー? どれくらいの代償がいる?手放したくないもんはどれ?
引用元:スキマスイッチ「ゴールデンタイムラバー」
このあたりでオープニングに映るのはブリッグズ編を経て危険に晒されるエドとアルの二人の姿。
アルは魂と鎧のリンクが途切れかかり、エドは重傷を負ってしまう。
そんな苦境のなかでも希望を捨てずに彼らは奮闘し続ける。
オープニングの歌詞とストーリーが重なり合って見ているこっちの想像を掻き立てられます。
最初と最後のシーンでは、印象的な白い花が出てきます。エドが拳で潰したかのように見えたその花は、手を除けると傷つくことなく依然咲いていました。
エドは「殺さない覚悟」を自分の信念として持っていました。小さい一輪の花と言えど、決して生命を冒すことない彼の姿勢が表れたのではないでしょうか。
このようにゴールデンタイムラバーはスキマスイッチの冴えわたる作詞作曲のセンスとボーカルの巧みさ、そしてオーディエンスの想像を喚起する映像表現など非常に良質なオープニングになっています。
イシュヴァール戦の悲惨さを込めつつサビに出てくるブリッグズの迫力にも興奮させられます。オリヴィエ姐さんカッコえぇ…となりました。
3位 ホログラム
NICO Touches the Wallsが手がけたFA版ハガレン2ndオープニング。
このホログラムという曲はAメロ、Bメロでキャラクター紹介のカットを連続させ、サビで味方達が敵キャラ(ホムンクルス)との戦闘を繰り広げ、そしてライバルキャラと一騎打ち。
最後に青空が映し出される…というもはやテンプレと言っても過言ではない王道なオープニングの作りになっています。
この直球なオープニング映像がハガレンでは逆に新鮮です。03年版も他のFA版オープニングどれも、人物の表情にフォーカスしたカットや情景・風景の描写が多く取り入れられている印象を受けます。ホログラムは、ハガレンの少年漫画的な側面――バトルや魅力的な登場人物勢といったもの――を強く押し出すことで他のオープニング映像とは違った良さが出ているのです。
それでいて木にもたれかかるエドとアルや俯くウィンリィやホーエンハイムの顔が隠れた家族写真といった静かで感傷的なシーンもアクセントとして機能し、動的なシーンとのメリハリもついていて、映像には全く文句のつけようがないと思いました。
NICOのボーカル光村龍哉氏の清涼感溢れる声が少年漫画らしい良い意味での青さにマッチしていますし、希望を感じさせる歌詞が自然と受け入れられますね。
歌詞といえば、この曲はダイレクトにハガレンを連想させる単語はあまり含まれていません。その代わり、タイトルのホログラムに関連した「光」「乱反射」「残像」といった単語を散りばめて、リズミカルに纏め上げることによってエド達がホログラム=光や希望を追い求めていく姿が自然と浮かび上がってくるようになっています。タイアップ曲はその作品を強く意識するのもまた一興ですが、敢えて直接的な表現は避けて聞き手に関連付けさせるのも面白いです。
NICO Touches the Wallsが作った曲とアニメーションで描かれた映像とが並行しながらも、反射しお互いを輝かせているオープニングと言えるでしょう。
2位 メリッサ
もはや語るまでもないハガレンの代表曲。ポルノグラフィティが提供した03年版ハガレンの初代オープニングです。
漫画の世界からアニメの世界へ移行するときに視聴者に大きなインパクトを残すのは何といっても音。絵は基本的に原作をなぞりますが、音楽だけは1から生み出さないといけません。その上、音楽は作品イメージを形成するのに重要な役割を持ちます。
メリッサはそのメロディ・歌詞が原作と非常にマッチしていて、ハガレンと言えばメリッサ、メリッサと言えばハガレンという切っても切り離せないほどの絆があると思います。「原作・アニメともども名前は知っていたけど見たことはない」という人も一度は聞いたことがあるくらいの知名度もあるでしょう。
ハガレンの初期から滲み出ていた「犠牲」や「過ち」を力強い言葉で語り、ポルノグラフィティによる独特な曲調がインパクトに残ります。「名探偵コナン 業火の向日葵」主題歌「オー!リバル」でも感じたことですが、激しさと切なさという相反する感情を1曲の中で呼び起せるアーティストは、ポルノグラフィティを除いて他にはいないのではないかと思います。
自分が思うにメリッサが歴代オープニングの中でも突出しているのはフレーズのキャッチーさです。
君の手で切り裂いて 遠い日の記憶を
悲しみの息の根を止めてくれよさあ 愛に焦がれた胸を貫け
引用元:ポルノグラフィティ「メリッサ」より
この歌詞は一目見ただけでもハガレンに漂う哀愁とそれに別れを告げようとする決意が伝わってきます。新藤晴一氏の作詞センスは相当キレていますし、原作のスピリットを拾い上げ、耳に残る音楽として形作ったポルノグラフィティ両名には心底感服します。
フレーズは誰でも口ずさみやすく聞いた後に「きーみのてっでー」と声に出してしまいたくなります。このあたりは前述の「READY STEADY GO」や「ゴールデンタイムラバー」に比べても歴然とした違いだと思います。
メリッサは、
- ハガレンの空気を再現
- ポルノグラフィティの魅力満載
- 聞いている側の心を鷲掴みにする
という三拍子揃った名曲。
映像的には当時まだ原作の巻数が少なく、話の方向性が明確でなかったためか、風景のカットが多めです。キャラクターもみんな顔見せ程度。サビの部分でエドとアルが戦う敵たちもホムンクルスではなかったりと若干薄味ではありますが、曲の良さが突き抜けているので評価は高いです。
1位!の前に小休止
トップ5に選出しなかったけどやはりハガレンの曲はどれも良いということで、コメントしていきます。
COOL JOKE「UNDO」
03年版ハガレンの3rdオープニング。
歌詞、映像ともにノスタルジーを前面に出しているように見受けました。他の曲と違って比較的優しくて落ち着いた空気が気に入っているのですが、「オープニング曲には少年心くすぐる格好良さが欲しい!」な自分にはトップ5には入れませんでした。
でも良い曲です。
しかし、現在ではなんだかんだトップクラスに聞いている曲です。聞けば聞くほどに、あの頃を爽やかに振り返る曲に思えます。本編では、グリードと戦い、本格的にダークな展開になっていたので、ギャップのあるオープニングでもありますね。
YUI「Again」
FA版ハガレン1stオープニング。
実は唯一の女性ボーカルのOP曲です。
YUIらしい透明感ある歌声、映像ともにかなり好きですが、トップ5が圧倒的に好きだったため僅差で入りませんでした。
しかし、先の展開を彷彿とさせる歌詞や冒頭のホーエンハイムがいい味出してますしサビ入り直前に堂々と立つ大総統やホムンクルスとエドの衝突に惚れます。
CHEMISTRY「Period」
FA版ハガレン4thオープニング。
絆を押し出した歌詞と映像があり、ポジティブ寄りな印象を受けます。
イントロがめちゃくちゃ格好いいですしサビに入ってからの勢いも抜群。
これも迷ったのですが、完全に自分の好みによってトップ5からは漏れました。
シド「レイン」
FA版ハガレン5thオープニング。
歌詞はとても詩的であり、タイトルのようにしっとりとした曲になっています。「オープニング曲は盛り上がらないとダメなんだ!」という個人的な趣向と衝突してしまい選外に。
…5本に搾るのは大変悩ましかったのですが、こうして振り返ってみるとハガレンはどの曲も素晴らしいと実感しますね。
1位 リライト
ASIAN KUNG-FU GENERATIONによる03年版ハガレンの4thオープニングです。自分、この曲が圧倒的に好きです。
Aメロ、Bメロでは、やけに淡々としたリズムに乗せてダウナーでローテンションな後藤正文氏の声が控えめに主張を繰り返します。この時間は「溜め」。
チャージ時間であり、喩えるなら嵐の前の静けさ。歌詞もまた、後ろめたさに満ちたワードで占められています。訴えている状況は喜ばしいものではありません。
軋んだ想いを吐き出したいのは 存在の証明が他にないから掴んだはずの僕の未来は 「尊厳」と「自由」で矛盾してるよ歪んだ残像を消し去りたいのは 自分の限界をそこに見るから自意識過剰な僕の窓には 去年のカレンダー 日付がないよ
この歌詞に重ねて険しい表情のエドや、存在を確認するかのように自身の拳を握るアル物憂げな表情のマスタングなどが出てきます。ネガティヴであり、静かであり、オープニングとしてはアングラでつまらない…そんな感想を最初は抱きました。
しかし、サビになると一変。陰惨を掻き消そうとする必死の叫びが、この曲のボルテージを最高潮に引き上げました。
リライト、つまり書き換えること。それがこの歌のコアであり、サビに至るまで並べた諦観とも鬱憤ともとれる言葉を消してしまいたい。
この叫びは、そうした思いを爆発させると同時に映像の迫力をも引き上げています。
まさしく歌と映像の共鳴。
オープニングの極致。
後藤正文氏の叫びが兎に角凄い。高所から飛び出し、着水するエドの派手なアクション、その後に続くラストとの激しい攻防が歌詞と叫びにこの上なくマッチしています。
一転して「超幻想」「起死回生」「原動力」「全身全霊」といった力溢れるワードと共に動きに富んだシーンが連続し、心が休まる時もなくあっという間にオープニングは終了。テンションが最高の状態に引き上げられたまま本編に繋がっていくのだから、当時に見ていたらもっと感動したであろうと容易に想像がつきます。
くるくる回りながら派手に指を鳴らすマスタングと一瞬のうちにマッスルポーズをとるアームストロングの姿。
野性的な表情を浮かべるラースの攻撃、それを避けるエドと対抗するアル。
口角を上げ、不敵な笑みを浮かべるエンヴィー。
最後、エドがアルと共に何処かへ旅立っていく後ろ姿に少しばかりの不安も覚えます。
とにかく感情を揺さぶられまくるオープニング。
NARUTOの2ndオープニング「遥か彼方」でもアジカンの武器であるダウナーな声質とそれに反発するような叫びがNARUTOの色調に劇的に合っていたので、素晴らしい音楽グループだと思います。
- アジカンの独特な魅力が感じられる
- 歌詞と曲の双方に感情を揺さぶられる
- エド達が織り成すバイオレントな映像が最高
以上の評価から、自分はリライトがハガレンNo.1オープニングだ!と叫ばせて頂きます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
冒頭述べた通り、完全に自分の主観で決めさせてもらいました。なので、人によってこのランキングは勿論異なってくることは承知しています。
5つのオープニングを上位に選んで改めて思ったことは、9個あるオープニングはどれも素晴らしい部分があり、それぞれ違った良さがあります。
いずれにせよハガレンは映像も音楽も恵まれていて、2度もアニメ化されるだけはあると実感しています。こんなことならガキんちょの時に放送されていたアニメをリアルタイムで追うべきだったな、と後悔してもいます。
が、縁とは奇妙なもので、昨年の12月に色々騒がれていたから観た実写映画からどんどん興味が沸いてきました。それから原作を読んで、アニメもチェックして、今回この記事を書くに至りました。
実写版は自分の中では低評価(この現状最低の35点)なのですが、漫画だったものがメディアで映画として広まり、ファンを増やし、またアニメ作品の音楽に触れて、他の事に興味を持ったりして次々と関心ごとが繋がっていく体験はとても面白いです。そういう意味ではあの映画にも大きな価値はあったな~と思い直しています。
とにかく鋼の錬金術師は目と耳に訴えかけてくる要素が最高な作品だということで今回は締めくくらせて頂きます。
お付き合いくださり、ありがとうございました!
(C)荒川弘/SQUARE ENIX・毎日放送・アニプレックス・ボンズ・電通2003
(C)荒川弘/鋼の錬金術師製作委員会・MBS
>そこに自分の限界を見るから
「自分の限界をそこに見るから」ですね。
ご指摘ありがとうございます!訂正しました。