軌道を巡る月のように『恋は雨上がりのように』第9話感想

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 こんにちは、ワタリ(@watari_ww)です。


 今回の恋雨は原作4巻の29話後半~32話いっぱいをアニメ化。
 前半にあきらとはるかの夏祭りと仲違い、後半に店長とちひろの再会が描かれました。最後に店長からあきらへの励ましをもって幕引き。

もう元には戻れない?

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 夏祭りの景色が賑やか。水あめ、かき氷、ヨーヨー、そしてあきらとはるかの装いも色鮮やかで細やかです。美術がきれいなアニメなので、目が安らぎます。特に冒頭のあきらのうなじ描写はやけに気合入っていました。素晴らしいの一言
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 夏祭りを楽しむ中で、陸上のことを話す二人。その時、遮るようにしてあきらの関心は偶然見つけた店長に向いてしまう。
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 明らかに女子高生とは不釣り合いな年頃の男性に恋をするあきらに対しては、当然疑問をぶつけます。しかし、それは好奇心から湧いたのではなく、部活から距離を置いて理解できなくなった親友への焦りのように見えます。
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 「気にしないで声かけてくれればよかったのに」

 何気なく告げたあきらの言葉さえも、はるかの内情を掠めて、不満に結びついてしまう。このやるせない感情は、誰しも身に覚えがあるのではないでしょうか。自分が特別心配していることを他人に何気ない事として済まされてしまうのは、苛立ちのきっかけになるものです。

 怪我を治して戻ってくることを微かに期待するのは親友だから。その気持ちが強まって、あきらへ強く当たってしまうのもまた相手を思いやっているからこそかもしれません。相手のことが嫌いなのではなく、好きだからこそ仲違いをしてしまうという人間関係の難しさが前半で描かれていました。
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 あきらとはるかが疎遠になってしまう一方で、後半は疎遠になっていた店長と九条ちひろが再会します。

大人じゃなく「同級生」

 高田馬場で久しぶりに作家になった旧友 九条ちひろと酌を交わす店長。

 学生時代に好きだったみそ田楽に喜び、互いの近況を語り合い、時にはやんちゃに罵り合ったりもする二人の姿は微笑ましい。
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 「恋は雨上がりのように」の店長は今まで一貫してファミリーレストランの店長あきらにとっての上司一児の父親といった大人」として描かれてきました。ここでは、青春を共にしたちひろと居合せて、節度や礼儀といったものは隅に置いた「近藤正己」のありのままが映されているんですね。

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 恋愛を扱うアニメではどうしても登場人物が一面的に描かれがちで、あたかも恋愛のために存在しているかのようになってしまうものです。恋雨の店長は、あきらとの恋愛を通じて揺れ動く「大人」として多面的に描きながらも、こうした飾り気のない姿も見せてくれるので、人間味を多分に感じられます

 ちひろに対して、「女子高生の描写がイマイチ」と得意げに語ったあたりからは、あきらとの関係に少しは浮かれている様子が見えるのもまた良いですね。

 作家として大成した友人を前に、普段小説を書いているとは言わないのは、夢を追うという「若さ」を遠ざけたいからなのでしょうか。でも、最後には「俺たちは大人じゃねーよ。同級生だろ」と掛けられ、郷愁に駆られたようです。店長の夢を見守りたくなりました
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軌道を巡る月のように

 みそ田楽の味を思い出していた時、あきらと鉢合わせた店長は、この時、彼女へ視線を寄せています。以前なら、視線を向けたがらない場面だってあったけれど、「友達」になってからは曲がりなりにも関心が強まったのでしょう。
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 落ち込んだ様子のあきらを心配し相談に乗ると、奇遇にも部活動の友人との仲違いを告白されます。

 店長が見せるスーパームーンは、楕円軌道において定期的に月と地球が最接近して起こる現象です。ここで彼は、かつては仲が良かったものの、特にわけもなく離れ離れになってしまった親友のことを語りだしました。「俺たちは大人じゃない。同級生だ」という言葉は、思い出は消えずに心に残り続けることを示してくれたのだとも言います。今は崩れてしまったように見えても、陸上をやっていた時の絆は確実にあった。そしてスーパームーンのように、満月のように、いつかまた元通りになるのかもしれない。そうなるよう、あきらは願いました。
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 店長もあきらも、月を前に、友を想うという気持ちは重なり合っているんですね。月が地球と重なり合って我々の目に届いているように。

原作との違い

 今回は珍しく、原作をほぼそのままアニメにしていたので、目立った変更点もカットされた箇所もありませんでした

 あきらと喜屋武、店長とちひろの関係を対比させる話は、主人公二人の内情を描くのにとても重要だったため、こうなったのだと思います。


(C)眉月じゅん・小学館/アニメ「恋雨」製作委員会

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