『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に存在する映画としての4つの弱点【ネタバレ】

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こんにちは、入社してから休日に全身全霊をかけて休息をとっているワタリ(@wataridley)です。

今回は「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」についての記事です。

 

アベンジャーズの魅力と弱み

アベンジャーズ」といえば、映画を観る人の中で今や知らない人はいないという程のビッグタイトルです。かのアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクなどの主役級人気キャラクターが一堂に会する機会であり、2012年公開の第1作「アベンジャーズ」を皮切りに、ドクター・ストレンジやスパイダーマンといったメンバーを加えながら今回の「インフィニティウォー(以下IW)」に至っています。アベンジャーズに登場するキャラクターや世界観を共有している映画群を「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼び、IW公開時点の現在では計19作品が発表されています。

魅力は、なんといっても豪華なクロスオーバーに違いありません。マーベルコミックのヒーローが作品の垣根を超えて、それぞれの個性を持ったまま、強大な敵を打ち倒すという共通の目的のために、共同作業を繰り広げるのです。知っているあのキャラクターとあのキャラクターがお喋りしている!だとか、得意技や能力を組み合わせて敵に1発入れてやったぜ!といった喜びを無数に提供してくれるMCUの規模は、作品が積み重なるにつれて今もなお成長し続けています。

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(C)Marvel Studios 2018

最新作のIWにおいても、勿論その魅力は順当に強化されています。特に今作では、今までアベンジャーズに合流していなかった「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(GotG)」の面々や、ソニー・ピクチャーズとマーベルが契約を交わしたことで「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で先行登場したものの本流アベンジャーズには出ていなかった「スパイダーマン」が出てくるというのだから、ファンの間で期待は膨れ上がっていたようです。

GotGは宇宙を舞台にしたストーリーだったため地球との関わりが薄かったクイル御一行も、今回は宇宙規模の危機が訪れるということで、巻き込まれていき、お馴染みのアベンジャーズと合流するというワクワクする流れには、観る者達の血液が熱せられるというものです。

さて、そんな興奮材料が満載のIWですが、数多くの弱点も抱えていると自分は考えました。

確かに面白い。熱い。そして最後には、衝撃的な展開も待ち受けている。

しかし、それは「脚本が巧みだから」「演出が優れているから」「台詞が印象的だから」といった映画的な技術から来るものではなく、あくまで「豪華キャラクター総出演」というお祭り感に由来するものなのです。

身もふたもない話であることは承知で言わせてもらうと、今作の物語を我々観客が知らないキャラクターと世界で繰り広げられたら、果たしてそれを面白いと思えるのか?と考えると、どうにも返答に窮してしまいます。IWは、アベンジャーズがキャラクターありきのシリーズであることを究極的に活かした作品である反面、それを引っこ抜いたたら極めて中庸な話に成り下がるリスクも抱えているのです。

この記事では、自分がIWに感じた弱点をネタバレを交えて記述していきますので、ご承知の上でご覧ください。

 

①メッセージに新鮮味がない

今作のボスキャラクターサノスは、肥大化する宇宙の人口を半分にすることで均衡を保とうとする思想を持っていました。現在の地球も人口は70億を突破し、食糧危機や資源枯渇といった問題が表面化してきています。種全体、強いては世界そのものを存続させるために、犠牲を払わねばならないというのがサノスの考え方であると同時に、我々が現実でも直面さざるを得ない選択肢でもあります。

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(C)Marvel Studios 2018

それに対抗するのがアベンジャーズの面々。彼らは犠牲を払うことなしに、世界に平和をもたらそうと奮闘していました。トニーの身に危険が迫った時にはドクター・ストレンジはあっさりとタイムストーンを引き渡したし、ヴィジョンの命を犠牲にしてまでマインドストーンを摘出することをスカーレット・ウィッチは拒んでいました。「命に大小はない」というセリフがそれを如実に物語っています。

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(C)Marvel Studios 2018

アベンジャーズVSサノスの対立構造は理想VS現実になっていることがわかると思います。アベンジャーズが示す「全員を救う」という思想は立派であるし、それが実現するに越したことはないでしょう。しかし、その実現可能性は極めて低く、現実に全ての人が幸福でいることなどできません。

一方で、サノスが唱える犠牲に基づく平和は、たしかに実現可能性は高いでしょう。その過程がいかに残酷であれ、作中では現に間引きを施した惑星がその後も存続していることが、その証左になっています。

IWが示すメッセージは、上記の通りだと思っているのですが、この訴え方にあまり工夫がないのが気になってしまいました

まず、「平和のためには多少の犠牲はつきものだ」といった古今東西ありふれた考え方が、IWでは特に独自の改変を加えることなく、テーマとして据えられています。結果として、既視感のある話になっているように感じます。

サノスの面白いところは、世界を滅ぼすためではなく世界を救うために行動を起こしている部分なのですが、そこを掘らずに、単なる悪役対正義の味方の構造になってしまっているのも、物足りないと感じるところでした。

確かに作中では、ガモーラへの愛情をちらつかせたり、死亡した部下に思うところがあるような仕草を見せたり、人間味を感じさせる描写を入れてはいました。

しかし結局はアベンジャーズと徹底対立し、殴り合うだけなのです。あれだけの登場人物がいるのに、サノスの思想とそれに反するものという単調な構造に陥ってしまっているのは、もったいないと思います。

登場人物が多すぎるから立場を単純化したという意見もあるでしょうが、そのせいでキャラクターの内面描写が十分に描写されないというのは個人的には看過できないところです。色んなキャラクターが出て来るのであれば、色々な思想や考え方も提示してほしかったです。

「世界を救いたい」という共通項が無視されて、まるでサノスが世界を滅ぼす悪のような扱いになってしまい、アベンジャーズが全面的な正義のように映ってしまったのも気になります。サノスも、アベンジャーズも平和を求めているという点で一致しているという部分をもっと掘っていけば、新鮮な争いに持ち込むことができたと思うので、そこが非常に惜しい点でした。もしかしたら、次回作で触れるかもしれないので、注目していきたいです。

 

②戦闘がワンパターン

IWのアクションの迫力については文句はありません。多種多様なキャラクターが自分の個性を発揮しながら戦っていく姿は面白かったです。

ただ、じゃあ戦闘で印象的な場面を思い浮かべようとすると、意外と思い浮かばないのです。見ている最中は迫力に満ちていて、圧倒的な物量と情報量に目を刺激されるのですが、漫画で言うところの見開き絵のようなインパクトあるカットが足りませんでした。

ビッグバジェットの作品なので、映像のレベルは高いのは間違いありません。

しかし、潤沢なリソースをとにかく投入しまくった代償として、裏をかくような工夫に欠けてしまっています

スパイダーマンが惑星タイタンで障害物の間を縫ってワイヤーアクションを繰り広げる映像は、正直サム・ライミ版からずっと続いてきたスパイダーマン史の中ではありふれたパターンのひとつだと感じました。アイアンマンのスーツの新機能もお披露目はするものの、フォーカスされることなく、どんどん軽く流されていってしまうために、興奮したり驚いたりする暇を与えてくれず、整理できません。

映像の外連味のなさが特に顕著になっていくのが、ワカンダの草原で繰り広げられる大規模戦闘のシーンです。

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(C)Marvel Studios 2018

この場面では大量のクリーチャーを、ティ・チャラ率いるワカンダの戦闘員とバッキーやキャプテン・アメリカ、ブラックウィドウが迎え撃つと言うなんとも贅沢でスペクタクルな戦争でした。

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ところが、集団を次々となぎ倒していくというこれまたありふれた映像に終始してしまっています。

迫力はある。凄い。

しかし、観た後に具体的にどこが凄いのかと問われると、事細かに例示するのは難しいです。バッキーはただ銃をぶっ放しているだけでしたし、キャップは盾というよりはナックルみたいな装備で敵を殴りつけているだけで、個性が感じずらい場面でした。ロケットやグルート、ソーがここに参戦してきても、結局雑魚敵を倒しまくると言う部分で観客が想定できるような出来事しか起こらないので、どこが凄いとか言いづらいのです。

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(C)Marvel Studios 2018

そして、最も不満なのが、戦闘が実力や戦略ではなく、外部要因で終わっているのが大半だという点です。具体的には横槍が多すぎると思いました。「ピンチに陥る→誰かが助けてくれる」というシーンが上映時間中、何度も繰り返されていました。

オープニングでサノスを背後から不意打ちしたハルク、ピンチに陥ったヴィジョン達を助けるキャップ、圧倒的な敵の数に苦戦するキャップたちに加勢するソー、喉元に刃を突きつけられたナターシャを助けるスカーレットウィッチ、キャップと敵との迫り合いに背後から攻撃するヴィジョンなど、戦闘に横槍が入るので、もはや途中から次の展開が見え見えになってしまうのは、あまりに単純すぎます。

終盤、その場に残ったヴィジョンに対してキャップが「なぜ逃げなかった」と問いますが、そりゃ2対1で戦った方が有利に決まっているでしょうと思ってしまいました

戦闘描写やアクションがビッグバジェットのせいでむしろ単調になり、戦闘の決着が横槍展開といった形で解決されてしまうのは、自分の口に合わなかったです。

 

③サノスの内面描写がおざなり

サノスが見せる心情については、作中部下を無下には扱っていないところや、ガモーラとの出会いと別れ際に見せる涙で表現されていたのだと思います。しかし、それらの描写を見ても、サノスを受け入れる気にはなれませんでした

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(C)Marvel Studios 2018

というのも、ガモーラに愛情を持っていたというヴォーミアでのやり取りに至るまでの積み重ねがないからです。過程がすっぽ抜けているために、唐突に感じました

観客がそれまでに見ていたサノスは圧倒的なパワーを持ち、有無を言わさずに自分のルールを押し付ける暴君としてのイメージが強いです。オープニングでハルクを往なすあたりで、強さのインパクトは伝わってきましたし、地球を混乱に陥れることも厭わない凶暴なやり口にもハラハラさせられました。

ただ、人間性に関して言うと、ガモーラを引き取った際に半数を殺戮したエピソードや、彼女を育てる時にも一方的な教育を施したと言う一般に理解しがたい性格が押し出されていて、彼が愛という普遍的な感情を持っていることの説得力が足りませんでした。ガモーラを捕らえた際に、引っ掛けとはいえクイルに撃たせる流れも作っていました。

これらの俗世離れした一面ばかりが頭に残るので、ソウルストーンの代償として「愛する人=ガモーラ」を差し出して成立してしまうのは、全く納得いきませんでした。このあたり、もろに脚本の都合を感じてしまい、没入感も削がれてしまいました。涙を流すに至るほどの愛情描写は自分の目から見て、一切なかったように思います。

 

④キーアイテムらしからぬインフィニティストーン

サノスがインフィニティストーンを6つ集め切ったら、宇宙の半分の人々が消え去るという状況が序盤に説明されていました。アベンジャーズは、それを防ぐために各々行動を起こすというプロットです。

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(C)Marvel Studios 2018

観客は敵であるサノスのインフィニティストーン集めを見守るという作品上の仕組みは面白かったです

漫画のドラゴンボールにしろ、コロッケ!にしろ、物を集めるのは基本的には主人公サイドでした。観客にわかりやすく主人公の目的を示す手段としてコレクション要素が用いられてきたのですが、IWでは敵のサノスに集めさせることで、徐々に世界の終焉を意識させることを狙っていたのだと思います。サノスの能力が終盤に向かうにつれて、インフレしていくといった効果も考えられます。

しかし、インフィニティストーンの扱いについては雑な部分があったと思います。リアリティストーンは複数回に渡って能力を行使していたので、特徴を把握しやすかったのですが、その他の石に関しては、一回きりだったり、使っても説明がなかったりと不親切さが目立ちます

インフィニティストーンは今までの作品でちらちら出てきていたものが今作でキーアイテムとなっていて、説明を敢えて簡略的にしたという見方もできます。しかし、単作の映画として見ると、石の説明が不十分というのは、消化不良です。

ナルトの幻術のようなことができるリアリティストーンと時間を巻き戻すというタイムストーンが視覚的なインパクトをもたらしていた一方で、瞬間移動や惑星破壊といったものについてはIW内で説明がさらっとしていて、初見の人には石の能力なのかサノスのパワーなのか判別しづらいのではないでしょうか。タイタンでの戦いでは、他の星を破壊して攻撃に使っていましたが、スピーディーに事が運びすぎて、どの石を使っているのか、把握しづらかったです。

IWのキャストがそれぞれの石の名前を答えるクイズに挑戦し、6つとも正答したのがトム・ヒドルストンだけだったと聞きましたが、映画の中で6つ全てを扱いきれていないので無理もないでしょう。

また、インフィニティストーンの持つ状況説明としての役割も十分ではないです。6つ集め切ったら大変だというのは口頭で説明されているのですが、いまいち実感を伴って理解できないのです。石を集めることで、サノスが強化されていくことが視覚的に示されるシーンがなかったり、ゲットした時の演出がやけにあっさりしていたために、観客に事の重大さを伝えきれていないように思います。ガントレットに着々と石が集まっていく変化をもっと仰々しく写したほうがわかりやすいです。

集めるという行為は、物語がどの段階にあるのかを観客に示す役割があるのは「レディ・プレイヤー1」でも感じました。3つの鍵を集めるという目的が最初に示されることで、1つ目が導入、2つ目が中盤、3つ目がクライマックスという三幕構成を理解させやすくしていたのです。1つ目の試練をクリアしたら、次はまた別の場所で、という具合に状況変化も明確になっています。

IWでは6つの石を集めていく過程でひとつ手に入れるごとに、状況が大きく変わるようにも見えず、最後の石を手に入れる部分を除くとやけに淡々と集めていったように映ります。

 

まとめ

以上、IWを単作として見たときの問題点を挙げてみました。

先月に観た「ブラックパンサー」は、別作品とのリンクを漂わせながら、ひとつのヒーロー映画として纏まっている作りでした。ブラックパンサー自体は「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」で先行登場していたものの、観ていなくても問題はないというレベルでしたし、独自の世界観とメッセージを提示する作品に仕上がっていました。

IWは独自の世界観をこの作品内で提示しきれているかと言われると、インフィニティストーンやサノスの描写が不十分でした。また、オールスター作品ということで2時間半の長尺になった割には、新鮮味の薄い戦闘が多く、横槍のようなワンパターンさも散見されてしまいました。

メッセージに関しては、ありきたりと評しましたが、これについては次回のアベンジャーズ次第で変わってくる可能性はあります。今作では、犠牲を出してでも均衡を求めるサノスが勝利し、犠牲なき平和を求めるアベンジャーズが敗北する衝撃的な結末で幕を引きました。

これを如何にして覆すのか。次回作に大きく期待したいと思います。

ここまで、ウィークポイントを挙げてきましたが、アベンジャーズの良さは「出血大サービスなスーパーヒーロー総出演」という部分にあるので、本作の評価は、そこで弱点を埋め合わせられるかにかかっているとと思います。全作を観たわけではない自分にも、熱くなるシーンは目白押しでしたし、愉快なキャラクター同士のやり取りに笑みが溢れてしまうこともありました。

マーベルヒーローに手厚いファンサービスをしてくれる場としてアベンジャーズは一級品だと思っていますし、映画作品としての完成度を求めるのは少々酷なのかもしれません。それを承知の上で、今回は映画作品としての弱点を自分なりに考えてみました。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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